法人が金融機関から資金調達するにあたって、銀行からの融資を検討するケースは多いでしょう。
しかし銀行融資の審査は、厳しそうなイメージがありませんか。
実際のところ銀行融資の審査は本当に厳しいのでしょうか。
ここでは銀行の借入審査の難易度や審査に落ちやすい法人、審査に通りやすくするためのポイントについてまとめました。
これから初めて銀行融資に申し込もうと思っている法人の代表者は、参考にしてください。
目次
銀行の借入審査の難易度について紹介
銀行の審査の難易度はどのくらいか、これは各金融機関によってまちまちです。
金融機関が審査基準を公開しているわけではないので、正確な難易度についてはわからないというのが、正直なところです。
しかし銀行の種類と難易度には、ある程度の相関性があると考えられます。
銀行の種類は大きく4タイプに分類できます。
1. 都市銀行
2. 地方銀行
3. 信用金庫
4. 日本政策金融公庫
それぞれ一般的にどのくらいの難易度かについて、以下で詳しく解説しましょう。
どこに借入の申し込みをするかの、判断基準にしてみてください。
都市銀行
いわゆるメガバンクと呼ばれる、日本全国に支店を持つ大規模な金融機関を指します。
都市銀行の審査難易度は、一般的に高いといわれています。
メガバンクの主な得意先は大企業です。
経営基盤がしっかりしていて、業歴も長い安定した法人でないと、なかなか融資を受けるのは厳しいかもしれません。
創業間もないベンチャー企業や、売り上げ規模の小さな法人は融資を受けるのは難しいと考えられるでしょう。
しかし一方で金利は、金融機関の中でも低いといわれます。
規模が大きいので預金を広く集められて、金融機関として財務基盤がしっかりしているからです。
地方銀行
特定の都道府県や、地方をメインに営業している金融機関を指します。
地方銀行は地域密着型で営業しているので、主な融資先は地元の中小企業です。
中小企業を中心に貸付を行っているので、大企業をメインターゲットにしている都市銀行と比較すると、審査のハードルは低めといえるでしょう。
ただし都市銀行と比較すると審査が甘いぶん、他の金融機関と比較しても金利は高めの傾向が見られます。
信用金庫
地方銀行よりも営業エリアがさらに限定される金融機関が、信用金庫や信用組合です。
会員が出資して、プールされた資金をベースに営業しています。
信用金庫は銀行のような利益重視ではなく、地域社会に貢献することに重きを置いています。
地域社会の利益になるのであれば、中小企業や個人事業主のような、小規模な法人への貸し付けも積極的です。
中小や零細のような規模の小さな企業、業歴がまだ浅いベンチャー企業にとっては、頼りになる金融機関といえます。
ただし金融機関の中では審査のハードルが低く、ほかと比較すると金利は高めになりがちなので、注意しましょう。
また信用金庫や信用組合で借入するためには、まず出資して会員にならなければならないので、注意しましょう。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、政府系の金融機関とよく呼ばれます。
政府が100%出資している金融機関です。
銀行や信用金庫と比較して、審査の難易度は低いといわれています。
銀行の場合、業歴の浅い企業は信用力が不足しているとして、融資に消極的な傾向が見られます。
しかし日本政策金融公庫の場合、創業融資といってこれから起業しようと思っているような、法人の代表者への貸し出しにも積極的です。
企業のための資金を金融機関から借入したいと思っているのであれば、日本政策金融公庫を利用するのも一考です。
日本政策金融公庫は審査の難易度は低めなものの、金利も低めに設定されています。
しかし審査にかなり時間がかかるため、その部分は留意しておきましょう。
1か月以上かかることもざらにあります。
それまでの資金繰りをどうするか、つなぎ融資の活用なども視野に入れておくとよいでしょう。
銀行の借入審査で重視されるポイント
借入の申し込みを受理すると融資してもよいか、銀行で審査が実施されます。
銀行の審査基準は公開されていないものの、さまざまな角度から見て総合的に判断するのです。
一般的に以下のようなポイントを見て、融資の可否を判断するといわれています。
1. 資産額
2. 財務状況
3. 事業計画書の内容
4. 資金の用途
5. 返済計画が明快
6. 税金などの滞納の有無
7. 銀行の格付け状況
8. 代表者の資産状況
それぞれ何が重視されるのかについて、以下で詳しく解説しましょう。
資産額
銀行の借入審査で、法人の決算書の内容は重視されます。
決算書のポイントの中に、貸借対照表の純資産があげられます。
純資産が多くあれば、自己資本が厚く健全な経営のできている法人であると判断されるのです。
貸借対照表は、法人に財産と負債それぞれどのくらいあるかを示す書類のことです。
資産と負債、純資産の3つによって構成されています。
負債と純資産を足したものが、資産になると考えてください。
もし資産がマイナス、すなわち純資産よりも負債のほうが多くなると、法人に資金が十分ない状況と判断されます。
こうなると借入するのが厳しくなるでしょう。
金融機関から融資を受けたければ、純資産の状況がどうなっているか、貸借対照表を定期的に確認することが大事です。
財務状況
会社の財務状況がどうなっているかも、金融機関は審査をする際に重視します。
その中でも損益計算書の内容をチェックします。
損益計算書とは、会社の営業成績を数値化した資料になるものです。
損益計算書の中で重視されるのは、営業利益と経常利益の状況です。
営業利益とは本業で得た利益のことで、売上総利益から販売管理費と一般管理費を差し引いたものをいいます。
経常利益とは経常的な経済活動の結果得られた利益のことで、営業利益と営業外利益から営業外経費を差し引いたものの、トータルの額です。
もし営業利益や経常利益がマイナスになっていると、収益を稼ぐ能力に乏しい法人であると判断されます。
稼げないのであれば、融資しても返済される可能性が低いと判断され、審査で引っかかってしまう恐れがあります。
もし金融機関からの借入を希望するのであれば、営業利益並びに経常利益をプラスにできるように努めましょう。
事業計画書の内容
金融機関から融資を受けるためには、事業計画書を作成して提出しなければなりません。
事業計画書とは、今後の事業の計画について説明するための資料です。
事業計画書の内容を見て「これなら貸し付けた債権を回収できる」と、銀行を納得させる必要があります。
事業計画書で重要なのは2点です。
まずは将来性のある事業であることをアピールしましょう。
もうひとつはどのように借り入れた資金を、返済していくかの計画も盛り込みます。
返済計画では返済原資を明確にしましょう。
どのように借入金を返済していくのか、返済資金をどのように稼ぐのかを説得力あるものにまとめましょう。
もし事業計画書が説得力のある内容であれば、貸借対照表や損益計算書の内容が芳しくなくても、金融機関から融資を受けられるかもしれません。
それだけ重視される項目なので、返済計画と事業計画の内容に整合性をもたせ、相手を納得させられるような内容にまとめましょう。
資金の用途
借り入れた資金をどのように使用するのか、これは金融機関の審査の中でほぼ確実に聞かれる項目と思ってください。
資金用途がはっきりしない場合、その時点で融資を断られる可能性が高いのです。
何のためにどのくらいの額が必要なのか、客観的に説明できるように準備しておきましょう。
法人が金融機関から借入申し込みをする際、資金用途は大きく2タイプに絞られるでしょう。
それは運転資金と設備資金です。
運転資金は会社を経営するために必要な資金のことで、人件費や納税のための資金、赤字を補填するための資金などが該当します。
一方設備資金とは事業拡大などの目的で、機材などの設備を新たに購入するための資金のことです。
もし設備資金を借り入れようと思っているのであれば、購入する設備の見積書や投資計画書の提出も、あわせて求められるでしょう。
金融機関から質問を受けた際にも明確に答えられるよう、抜かりのないようにしっかり準備しておいてください。
返済計画が明快
金融機関の審査では、借入金の返済計画が説明できるか、説得できる内容化も重視されます。
貸したお金をきちんと回収できるか、できなければ銀行にとって損害を被る形になるからです。
返済計画の資料を作成する際には、先方が納得できる内容にまとめる必要があります。
月々いくら返済して、返済期間がどのくらいか具体的に数値を示して、客観的に説明することが大事です。
この時法人の実情に即したものでなければなりません。
返済計画を策定するにあたって、資金用途が大きく関係します。
運転資金の場合、毎月の返済可能額をまず算出して、そこから逆算して返済期間を示す形になるでしょう。
一方設備資金の借入の場合、設備の減価償却期間を上限で期間をまず算出しましょう。
そのうえでその期間をベースに月数を頭数にして、1回当たりの返済額を算出する形で計画書を作成します。
もし返済計画を立てるのであれば、資金繰り予定表を活用するとよいでしょう。
資金繰り予定表で、返済計画をシミュレーションできます。
無理のない返済計画にするためにはどうすればよいか、さまざまな観点から検討しましょう。
また据置期間を考慮してもらえるかどうかも、重視したいところです。
据置期間とは、利子の支払いだけで済ませられる期間のことです。
このように返済計画を立案する際には、さまざまな用途を考慮に入れないといけません。
自分で金融機関を納得させられる返済計画を立てられなければ、顧問税理士など専門家に相談するのがおすすめです。
税金などの滞納の有無
税金の滞納が見られる場合、金融機関の審査落ちになってしまう可能性が高いものです。
税金のほかにも社会保険料や、公共料金の支払いなどを滞納していても、同じような結果になるでしょう。
税金や社会保険料の支払いは、会社の経営状況関係なく、必須の項目です。
その支払いがきちんとできていなければ、もともと資金力のない法人と判断されてしまうわけです。
またクレジットカードの支払いができていない場合も、金融機関は融資に慎重になると思ってください。
クレジットカードの支払い状況は、信用情報機関に照会すればすぐにわかることです。
長期の延滞や債務整理を行ったなど、金融事故情報が掲載されていると銀行から借り入れるのは、かなり難しくなると思ってください。
銀行の格付け状況
銀行の格付け状況がどうなっているかも、融資の可否を判断するにあたっての重要な材料になります。
各行独自に、取引先企業の格付けを実施しています。
格付けがどうなっているかは、どの金融機関も公表していないはずです。
しかし一般的には正常先・要注意先・要管理先、破綻懸念先・実質破綻先・破綻先の6つに区分されています。
最高格付けの正常先であれば、審査をクリアできる可能性が高いのです。
プラス融資条件もよくなり、無理のない返済計画も立てやすいでしょう。
要注意先や要管理先になると、慎重に審査をしなければならないと判断されます。
財務状況などで不利な状況が発見されれば、借入できない可能性もあります。
破綻懸念先以下の格付けになると、原則融資は受けられないと思ってください。
格付けは各法人の決算書をベースにして、判断される場合が多いものです。
金融機関で融資の審査を受けて、借入できるかどうかの結果は銀行が自分の会社のことを、どう評価しているか判断できる貴重な機会ともいえます。
そのため別に資金は必要なくても、自社の経営状況を客観的に見つめなおすことで、審査を受けるのも選択肢のひとつです。
代表者の資産状況
法人の代表者の資産状況がどうなっているかも、金融機関の融資審査の中で重視される項目です。
銀行融資の場合、法人の代表者が連帯保証人になることを条件で、貸し付けを行っているところも多くあります。
連帯保証人とは法人が返済不可の状況になった場合に、残債の返済義務の発生する人のことです。
もし代表者に十分な資産があれば、法人がダメになっても代表者から債権回収できると判断され、審査通過しやすくなります。
また借入金利を下げてもらえる可能性があるので、返済負担を軽減できるかもしれません。
連帯保証人になるというと、ネガティブなイメージをもつ人もいるかもしれません。
しかし審査や借入条件のことを考慮すれば、あえて連帯保証人になるのもひとつの手です。
銀行融資の審査で否認される理由
銀行で資金調達しようと思って申し込んだけれども、審査に引っかかって借入できなかったというケースもあります。
なぜ審査落ちになってしまったのか、いくつかの理由が考えられます。
主な理由として、以下のような要因があげられるでしょう。
1. 資金用途や借入額が不透明
2. 返済原資が不明
3. 信用情報に問題がある
4. 決算内容が悪い
審査不通過になる理由は、おおよそこの4つのうちのいずれかと考えてください。
どのようなところが問題なのか、以下で詳しく紹介します。
資金用途や借入額が不透明
資金使途や必要な借入額についてはっきりしなかった場合、金融機関の審査に受からない可能性があります。
まず資金使途ですが、事業関係の資金でなければなりません。
基本的に運転資金もしくは、設備資金が対象です。
もしなぜこれだけの資金が必要なのか、きちんと説明できないと審査で引っかかってしまいます。
また設備資金の借入を希望する場合、その設備を購入するために必要な資金を証明するために、見積書などを用意しなければなりません。
もし見積書などから必要金額の根拠を確認できない場合、根拠不明で否認となってしまいます。
金融機関の審査に落ちた場合、再度借入の申請は可能です。
しかし同じやり方でやっても、審査落ちになってしまうリスクが高いでしょう。
たとえば設備資金の場合、内訳を明記している見積書を準備して提出するように心がけましょう。
返済原資が不明
決算書から返済原資を確認できなければ、審査通過できない可能性が出ます。
返済原資を確認できなければ、銀行としては貸し出した債権回収が見込めないと、判断せざるをえません。
返済原資の計算方法ですが、当期純利益と減価償却費を合わせたものです。
当期純利益と減価償却費は、損益計算書で確認できます。
そのため借入の申請をする際には、損益計算書を含めた決算書の提出が求められるわけです。
また金融機関によっては、資金繰り表の提出を求めるところもあります。
資金繰り表から将来の収支がわかるので、返済原資があるかどうか確認できるからです。
もし銀行融資の審査に落ちてしまったのであれば、直近の決算書を確認してみるとよいでしょう。
そして返済原資が確保できているか、チェックしてみるとよいでしょう。
信用情報に問題がある
信用情報に何らかの問題がある場合に、審査落ちになってしまう危険性があります。
信用情報とは、これまでのローンやクレジットに関する借入や支払い履歴について、記録されているものです。
とくに信用情報の中に異動の履歴がある場合には、審査不通過になる危険性が高まります。
異動履歴があるのは、長期的な支払いの延滞や債務整理、代位弁済などをした場合です。
いずれも銀行が信用力について、大きく問題視する事柄ばかりです。
信用情報にはクレジットカードやローンの履歴について、カバーしています。
税金や社会保険料の延滞に関する情報は、信用情報には記載されていません。
もし滞納している場合ばれないかというと、決してそうではありません。
税金の場合、納税証明書から納税しているかどうかの確認ができます。
また社会保険料は決算書で確認できます。
決算書に記載されている預かり金に計上している金額に、齟齬がないかの確認は可能です。
先ほど紹介した信用情報ですが、自分のものに関しては照会可能です。
借入の申し込みをしたけれども審査に通らなかった、ほかに思い当たる節がない場合には、信用情報を確認してみてください。
信用情報の中でも忘れられがちなのが、スマホの支払いでしょう。
スマホ端末を購入するにあたって、分割払いを選択する人もいるでしょう。
この時支払いは毎月請求される携帯料金に、上乗せされる形で行われます。
もしうっかり期日までに支払いをしていないと、信用情報に延滞という形で記録されてしまいます。
スマホを分割払いにしている場合、忘れずに支払って信用情報に傷をつけないように心がけましょう。
決算内容が悪い
決算内容が芳しくないと、審査落ちになってしまう恐れがあります。
とくに赤字決算になっている場合、審査は厳しくなると考えておきましょう。
赤字なことは収入よりも支出の多い状況で、返済資金を確保できない恐れが高いと、銀行は判断します。
そのようなところに融資しても、返済される可能性に疑問点が出てくるので、貸付を見送る可能性があるわけです。
ただし赤字の原因が一時的なものであれば、借入できる可能性が出ます。
昨今のコロナ禍や審査をはじめとした自然災害に伴い赤字になっている場合、持ち直す可能性があるでしょう。
もし赤字決算になっているのであれば、あくまでも一時的であることを説明します。
そこからどう黒字回復するか納得できる説明ができれば、借り入れられる可能性が出るでしょう。
金融機関の借り入れ審査に受かるためのまとめ
ここまで見てきたように銀行で借入するためには、審査について意識する必要があります。
銀行の審査では法人の業績や保有資産、信用力など総合的にチェックし判断されます。
もし信用力や経営状況に問題ありと判断されると、借入ができない恐れも出てくるものです。
ここで紹介した審査落ちの主要な理由を頭に入れて、より確実に金融機関から借入できる方法を考えていきましょう。