証券担保ローンを利用すると、有価証券を売却して資金調達するよりもさまざまな恩恵を受けられます。そのため、証券担保ローンを利用して資産運用をしている方もいらっしゃることでしょう。
しかし証券担保ローンにはいくつかの禁止行為があります。証券担保ローン契約時の禁止行為、株式などの取引における禁止行為、証券担保ローン利用時に注意するべき禁止行為などです。この記事では証券担保ローンに関わるさまざまな禁止行為を紹介しています。安全な取引ができるよう心掛けてください。
目次
証券担保ローンとは
株式などの有価証券を担保にして融資を受けられる仕組みが証券担保ローンです。所有している株式などを売却せずに資金調達できるため、非常にメリットがあります。とくに次のような特徴が証券担保ローンの魅力です。
・自社株など売却できない株式を有効活用できる
・株式の権利が残るため株主優待や配当を貰い続けられる
・資金の使い道は自由
・売却せずに資金調達できるため、売却益にかかる税金がかからない
マイカーローンや住宅ローンなどと違い使い道に制限はなく、資金をさまざまな用途に利用できます。株式への追加投資をおこなうことも、不動産投資や事業資金として活用することも自由です。
また一部企業の証券担保ローン情報は信用情報機関へ記録されないため、その他のローンに影響を与えません。
証券担保ローン契約時の禁止行為
メリットの多い証券担保ローンですが、禁止行為はあるのでしょうか。
多くの場合20歳未満の証券担保ローンの利用は禁止行為となっています。利用できる年齢の上限は証券会社によって違い、75歳以上は要相談としている金融機関もありますので、該当される方は確認してください。
担保にできる有価証券は、本人名義の証券口座に預けている有価証券です。他人名義の有価証券を担保として利用することは、禁止行為とされることがほとんどです。しかし条件によっては第三者からの担保提供を受けられることもあります。詳しくは証券担保ローン取り扱い金融機関に相談してください。
証券担保ローンに必要な株式などの取引についての禁止行為
有価証券を担保にするため、有価証券に対する禁止行為も守らなければなりません。株式取引における禁止行為は次の通りです。
相場操縦行為
本来、需要と供給によって正常に保たれているはずの相場を、人為的に変動させることは禁止行為とされています。具体的には次のような行為です。
・仮装取引
・馴合取引
・見せ玉
・終値関与
・高値安値関与
・買い上がり売り崩し
・株価固定
意図せずに相場操縦のような取引をしてしまうこともあるので注意してください。
内部者取引
会社役員など会社の内部者(インサイダー)がその立場によって知った情報を利用し、優位に取引することは禁止行為とされています。さらに自分自身が会社の内部者でなかったとしても、会社関係者から未公開の情報を提供され、それを利用して取引をおこなってはいけません。
自身が会社の内部者となる場合には内部者登録が必要となる場合もあります。
風説の流布
虚偽の情報を流して株価を変動させることは禁止行為です。明らかな虚偽ではなくても、根拠のない噂を流すことが風説の流布に該当することもあります。
仮名・借名取引
脱税やマネーロンダリングを防ぐため、架空の名義や他人の名義を取引で使用することは禁止行為です。家族の口座を本人になりすまして使用することもいけません。
空売り規制
空売りによって株価を意図的に下げる行為は禁止行為です。空売り規制をすり抜けるような注文を繰り返すと、空売り規制に抵触する可能性があります。
証券担保ローン利用時に注意するべき禁止行為
証券担保ローンを利用する時には、証券会社の担当者が禁止行為をおこなっていないか十分に注意しましょう。
利用目的があって融資を受けた場合でも、そのお金でさらなる投資をしないかと提案されることがあります。投資を進めるかどうかは自己責任ですが、証券会社担当者の勧誘方法が禁止行為に当たることもあるので注意が必要です。
取引を無理に継続させるような勧誘は禁止行為の可能性
多額の現金が必要になった時、株を利用して現金を作る方法は二種類あります。
・株の売却
・株を担保にして融資を受ける(証券担保ローン)
自分自身は株の売却を考えていたとしても、証券会社の担当者に「今後株価が上がると予想されている。保有していた方が得である」と証券担保ローンを勧められることがあります。さらに、証券担保ローンで得た資金を元にして更なる投資を勧誘されることもあります。
有価証券は価値が変動しやすいものです。
担保としている有価証券の価値が維持される、もしくは上昇する分には問題ありません。しかし有価証券の価値が下落してしまうと担保の価値が足りなくなり、担保の追加や融資の返済、有価証券の売却を求められることがあります。
このような事態の対応にはじゅうぶん注意してください。自分自身は有価証券の売却を望んでいても、本人の意思を変更させて取引を続けさせようとする証券会社担当者もいます。
常識的な勧誘であれば問題ありません。しかし、いきすぎた勧誘は禁止行為の恐れがあります。
有価証券の価値が下がっていくと、すべての財産を失ってしまうこともあります。自分自身でよく考え、その意思を尊重してもらうようにしましょう。
利乗せ満玉を繰り返させるような勧誘は禁止行為の可能性
利乗せ満玉とは、投資によって得た利益を確定させ、それをまた全額次の投資につぎ込むような手法です。株価が上がった時には大きな利益を生み出しますが、株価が下がった時にはすべてを失う可能性があります。これを繰り返すように誘導することは禁止行為の可能性があります。
証券担保ローンを利用して、この利乗せ満玉と同じような投資を勧める事例も発生しました。
証券担保ローンの借り入れを全額原資として投資信託を購入し、それを担保に借り入れ・投資することを繰り返すことで、大きな利益を得るというものです。
しかし有価証券は価値が下がる可能性のあるものです。株価の下落時にローンの継続ができなくなり、すべての有価証券の売却を迫られることがあります。株価下落時には購入時よりもはるかに安い金額で売却することになるため、大きな損害を出すこともあります。
利乗せ満玉のようなことを繰り返し勧誘された場合には、禁止行為の可能性があるため注意してください。
不誠実な勧誘は適合性原則違反という禁止行為の可能性
証券担保ローンを利用する本人の利益を無視し、証券会社の利益になるような提案をすることは適合性原則違反という禁止行為の可能性があります。
証券会社の担当者を信用し、すべて担当者に任せて取引を続けることで、知らず知らずのうちに自分の利益とは無関係な取引を重ねてしまうことがあります。自分自身も知識をつけ、おかしな取引を勧められていないか確認できるようにしましょう。
証券担保ローン利用における禁止行為のまとめ
証券担保ローンは有価証券の権利を所有したまま資金調達できるため大変便利です。
しかし禁止行為を把握していないと、意図せず違法行為をおこなってしまったり、大きな損害を出してしまったりということがあります。証券担保ローンで得た資金を元手に投資を続ける場合には、証券担保ローン特有の危険性も理解したうえで判断していきましょう。
また、資金調達方法は証券担保ローン以外にも存在します。自分に合った方法を選び資金調達・資産運用をしてください。