黒字倒産というのは、どんな企業で陥る可能性があります。たとえ順調に事業を進めていても、突然資金がショートしてしまい、黒字倒産してしまうのです。これには原因があり、この原因を知らなければ回避する事はできません。この記事では、黒字倒産について原因や回避方法を解説していきます。
目次
黒字倒産はどうして起こる?
黒字倒産というのは、企業にとっては思いもよらない事態です。事業も上手くいき、今後の見通しが立っていても突然倒産しなければならない事もあります。それには様々な事情があり、そのほとんどが「資金が不足している」という理由によるものです。ここでは、事業者にとっては絶対に避けたい事態である黒字倒産について解説していきます。
黒字倒産の概要
黒字倒産は損益計算書上では黒字の状態でも、資金繰りの関係で法人などが倒産する事を指す言葉です。黒字であっても倒産という事態になる事を知らない事業者も多く、赤字にだけ気をつけておけばよいと考えている事業者は危険な状況になる可能性があります。そのため、事業がうまくいっていて収益に問題がなくても、倒産という危機が訪れるという事は知っておいた方がいいでしょう。さらに、どういう場合に黒字倒産になってしまうのかを知っておくだけで、黒字倒産を回避する事は可能という事も頭に入れておくとしっかりとした対応ができます。
黒字倒産の原因
黒字倒産は事業が順調に見えていても起こってしまいます。黒字倒産は兆候が見えにくい状態の場合に起こり、小さなサインを見逃してしまうと一気に経営が傾いてしまうのです。ここでは、黒字倒産が起こってしまう原因を紹介していきましょう。
一般的に、黒字倒産が起こるのは3つの原因が挙げられます。
・掛取引が多い
・在庫管理が不十分
・収支管理が不十分
掛取引が多い事は危険なサインと言えるでしょう。掛取引というのは、後払いで代金を支払う方法の事です。他企業との取引において、掛取引が多いと自社に現金がないという事態が起こります。これには掛取引の仕組みが関係しています。一般的には、掛取引で持っている売掛債権は、現金化に時間がかかります。
現金化するのにタイムタグがあるという事で、損益計算書上の売上と手元資金にギャップが生じてしまうのです。1か月以上かかる場合もよくあり、すぐに現金が必要となった場合に手元に資金がないという状態が起こるリスクを抱えています。
こうした事情から全体の収支に対して、掛取引の割合が大きいと現金が突然必要に時に、資金が足りないという事態に直面してしまうのです。子おことから、黒字倒産のリスクが高まってしまいます。
2つ目の原因は在庫管理です。在庫管理が不十分で、過剰在庫を抱えている状態は危険な状態です。在庫管理に重点を置いていないと、常に在庫が余ってしまう場合があります。その状態が続けば過剰在庫が生じてしまい、実際の状況と事業者の認識にズレが生じるのです。会計上では在庫は資産と見なされる事にも注意が必要です。
売上につながる時には計算上は仕入費として計上されてしまい、利益として帳簿に載る場合があります。これが黒字倒産に陥ってしまう大きな落とし穴なのです。実際には利益が上がっていないにも関わらず、帳簿上は黒字の状態が続きます。営業キャッシュフローはマイナスの状態が続いていき、気が付いた時には手遅れになってしまう事があるのです。
3つ目は収支管理が不十分な事です。資金不足に気づかない場合も黒字倒産の危険性を高めています。このケースは副業として事業をしている場合に起こる事が多く、スモールビジネス事業者が陥りやすい状況です。事業の内容や営業、利益に重点を置くあまり、資金の流れや収支の流れをしっかりと管理していないと厳しい状況が起こります。
利益が出ているにもかかわらず、資金が足りなくなってしまう場合も起こりえるのです。利益の現金化と必要資金のバランスが崩れてしまうと、黒字倒産に陥る危険性が一気に高まります。経費を使い過ぎて、資金繰りが悪化するというのは起業して間もない場合やスモールビジネス事業者、事業の初心者、若年層の経営者などに非常によく起こる現象なのです。
こうした原因を見ていくと、黒字倒産は収支の確認を怠った事で起こる事が多いことが分かります。大切なのは会計士や税理士などの金融の専門家や銀行の融資担当者などに相談する事や自分自身でしっかりと経理の勉強をして確認を怠らないという事です。確認の際には、現金としてどれだけ資産を保有しているかを把握しておく必要があります。
黒字倒産にならないためのチェックポイント
黒字倒産は兆候を見逃した事で陥ってしまう事が多いです。収益が挙げられていても、黒字倒産になってしまう事も少なくないために、何をチェックするかが重要です。会社をする上では様々な書類があり、どれをチェックすればいいのか分からない場合もあります。そこで、ここではどの書類を見ておくと安心かを解説していきます。
一般的には、3つの書類をチェックすると黒字倒産の兆候が分かると言われています。
・資金繰り表をチェックする
・貸借対照表をチェックする
・損益計算書をチェックする
資金繰り表をチェックする
資金繰り表の収支をチェックする事が黒字倒産の兆候を見抜くポイントです。資金繰り表は企業にとって事業全体の金の流れを表にしたものです。当月の収支を書き込むことで、流れをチェックする事ができるので、資金繰りの悪化を即座に判断できます。黒字倒産は資金不足がほとんどの原因なので、資金繰り表のチェックは大きなポイントとなります。
貸借対照表をチェックする
貸借対照表で自己資本比率を確認する作業は、重要なチェックポイントです。貸借対照表は企業の財務状況が分かる書類であり、自己資本比率がアンバランスでないかをチェックする事が重要です。
自己資本比率が低いと黒字倒産のリスクが高く、高いと黒字倒産のリスクが低い状態にあると判断できます。経営の安定性を確認するためにも、この自己資本比率は重要な指標となるでしょう。
損益計算書をチェックする
収支のバランスをチェックする事も重要です。損益計算書は銀行の融資などを受ける時にも提出する重要な書類です。健全な会社というのは、この損益計算書をしっかりと記載し、確認作業も怠りません。「収益」「費用」「利益」の3つをまとめて書くことで、会社が事業においてどれだけ利益を得たのかを確認できます。
資金不足を確認すれば黒字倒産の兆候が判断できるので、損益計算書は重要な書類です。その一方で、損益計算書は利益を確認できますが、資金不足は見えにくい書類でもあります。そのため、損益計算書のチェックだけに留めないことも頭に入れておいた方がいいでしょう。
黒字倒産の回避法
黒字倒産を回避するにはどうしたらいいのでしょうか。事業がうまく言っていても起こりえる事態のために、回避する方法は知っておかなければなりません。基本的にはこれまで紹介してきた書類をチェックし、しっかりと対処していれば黒字倒産は回避できます。ここでは具体的な回避方法を解説していきましょう。
一般的には以下の対処法をすれば、黒字倒産を回避する事ができると言われています。
・入出金状況の把握
・売掛金の回収期間の短縮
・仕入代金支払いまでの期間の調整
・過剰在庫の削減
・資金調達先の確保
入出金状況の把握
入出金状況を把握する事は最も重要な回避策です。資金ショートが黒字倒産の最も大きい原因となっています。これを防ぐためには「いつ何の支払いがどれくらい発生するか」という事を把握し、「いつ何の入金があるか」を同時に確認する事です。このバランスが崩れると一気に黒字倒産の可能性が高まります。具体的には資金繰り表を1年間作成し、過去の資金の状態を把握します。そして、この先の支払いと入金のバランスを調整し、資金不足が生じないように調整していく事が回避するコツです。
売掛金の回収期間の短縮
売掛金の回収期間を短くする事で、黒字倒産の可能性を大きく下げます。売掛金は、帳簿上は利益ですが、現金化するのに時間がかかります。これが黒字となる大きな要因となるのです。現金で支払うモノは意外にも多く、仕入代金や人件費、光熱費などは、現金で支払われます。しかし、売掛金があっても現金として持っていなければ、黒字倒産になってしまうのです。売掛金の現金化には通常は1か月から2か月かかる事があります。この期間を少なくすることで、黒字倒産を回避する事に繋がるのです。
こうした事態を回避するには売掛金回収を前もって考えて、取引先との交渉をすることが重要です。入金のタイミングを早めてもらったり、一部を前払いしてもらったりする事も有効な対応策となります。
仕入代金支払いまでの期間の調整
仕入代金支払いまでの期間を長くしていく事も重要です。これは仕入れのためにかかる費用を、いつ入金するかという事です。売掛金回収の期間を短くする事には、会社に入ってくる現金を早急に回収するという意味があります。
仕入代金支払いまでの期間は一般的には「仕入債務回転期間」といいますが、これを長くしてもらう事で会社から出ていく現金を先送りにする事ができます。売掛金回収期間と仕入債務回転期間のバランスをしっかりと取っていく事が、黒字倒産を回避する最も効果的な方法と言えます。
過剰在庫の削減
在庫を過剰に持たないようにするというのは、先述した通り、大きなファクターとなります。在庫を過剰に持っていると、書類上では黒字倒産のリスクが分かりにくくなります。
さらに、売上金が入ってくるまでの時間が負担になったり、管理するために管理費がかかったりと会社にとってはいいことがほとんどありません。急激な需要の急増などの予測不能な事態に備えておく事は、ある程度のリスクがあると考えていいでしょう。まずは、しっかりと仕入れと売り上げ量のバランスを取っておく事が、黒字倒産の回避につながるのです。
資金調達先の確保
資金調達先を確保しておく事はいざという時にも重要です。仮に、黒字倒産という事態が現実的なものになった時にも、融資を受ける事ができれば黒字倒産を回避する事ができます。
つまり、現金が足りないという状況を「現金を借り入れる事」で回避するのです。黒字倒産の可能性が高まってから資金調達先を決めると、審査までに時間がかかってしまう事もあります。
時間がなければ、ノンバンクでの金利が高い融資を受ける事になります。こうなると月々の返済額が負担になってしまいます。こうした負担は赤字での倒産という事態につながるので、できれば金利の低い融資を受けたいです。
そのために、銀行や信用金庫、公的な金融機関などを資金調達先として確保し、融資担当者とコミュニケーションを取っておくことでいざという時に迅速に低金利の融資を受ける事が可能となります。
黒字倒産のリスクをなるべく減らす事と可能性が高まった時にしっかりとした対応をすることが、黒字倒産を回避する事に繋がると考えておいた方がいいでしょう。
黒字倒産の回避法のまとめ
黒字倒産の回避は、実はそれほど難しい事ではありません。気を付けるべき点を知っておけば、兆候を見逃さす事もなくなるでしょう。事業が順調な時こそ、帳簿や収益をしっかりと確認するという事が重要です。時には専門家の手を借りる事も、黒字倒産を回避する事に繋がります。
この記事で紹介した黒字倒産に関する情報を参考にして、黒字倒産にならないように気を付けてみてください。