贈与税とは?
はじめに「贈与税」とはどのような税金なのか解説していきます。 そもそも「贈与」とは、土地や建物といった不動産や自動車、さらには株式といった資産を双方合意のもと、“無償”で受け渡すことをいいます。 ポイントは“双方合意”の上に“無償”であることです。つまり、受け取る側が一方的に取得したものや、売買のように対価として金銭を支払っている場合は贈与には該当しません。たとえば、親と子の間で「将来のために資産を渡す」という約束をしたうえで、不動産や預金を無償で移転するケースは、典型的な贈与といえるでしょう。 たとえば、親が所有していた家屋を子供に“無償”で受け渡す場合や、友人から自動車を“無償”で引き取った場合などが「贈与」にあたります。年齢に関しても重要な点で、贈与を受ける側が20歳(※現在は18歳)以上かどうかによって、選択できる制度が異なる場合もあります。そのため、贈与を行う際には、当事者の年齢や状況を事前に確認しておくと安心です。 また、“双方合意”という規定があることからも分かる通り、「贈与」は財産の所有者が生存している状態で受け渡しが行われなければなりません。この点が、相続との大きな違いになります。実際には、20年近くにわたって少しずつ資産を移転する「生前贈与」を行うケースも多く、総額で見ると相続よりも税負担を抑えられる可能性があります。 そして「贈与」が行われると、資産を受け取った側には、その価額に応じた税金の支払い義務が発生します。これが「贈与税」です。贈与税は、1年間に受け取った資産の総額を基準に計算され、相続税と比べると税率が高いと感じる人も少なくありません。そのため、いずれ贈与を行う可能性がある場合は、早い段階から制度の内容を知っておくことが重要です。 ちなみに、似たような税金として「相続税」がありますが、こちらは資産の所有者が死亡した後に、その資産を引き継いだ人に課せられる税金を指します。どちらが有利かは資産の内容や総額、家族構成によって異なり、実際の判断には専門的な知識や実績が求められます。迷った場合は、税務に詳しい専門家が所属する会や相談窓口、topページで情報がまとまっている公的サイトを参考にするとよいでしょう。
贈与税の計算方法
「贈与税」とは「贈与」が実行された際に、資産を受け取った側に課せられる税金であることがお分かりいただけたかと思いますが、贈与が行われたからといって必ずしも「贈与税」が発生するとは限りません。 贈与という言葉を聞くと、「資産をもらった=必ず税金がかかる」というイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、贈与税には一定の控除枠が設けられており、すべての贈与が課税対象になるわけではない点は、正しく理解しておく必要があります。 贈与税が発生する条件は、受け取った資産の価格が年間110万円以上になった場合のみです。 この「年間」という点が重要で、1回あたりの金額ではなく、1月1日から12月31日までの1年間に受け取った贈与財産の合計額で判断されます。 これは、贈与税には110万円の基礎控除があるためです。基礎控除とは、一定額までは税金を課さないという仕組みで、少額の贈与や生活費・教育費の援助などについて、過度な税負担が生じないよう配慮された制度といえます。 したがって、1月1日から12月31日までの丸一年間で資産の合計金額が110万以上になった場合にのみ、110万円を超えた金額に税率をかけて贈与税額を算出し、支払うことになるというわけです。 たとえば、同じ人から現金を複数回に分けて受け取った場合でも、その合計額が110万円を超えれば贈与税の対象となります。一方で、110万円以内に収まっていれば、原則として申告も納税も不要です。 なお、このような贈与税の原則的な課税方法を「暦年課税」と呼びます。暦年課税は、最も一般的に利用されている方式であり、多くの人が無意識のうちにこの制度のもとで贈与を行っています。ただし、暦年課税には「特例税率」と「一般税率」の2種類の税率が存在します。 この2つの税率は、「誰から贈与を受けたのか」という点が大きな判断基準になります。具体的には、父母や祖父母など直系尊属から一定年齢以上の子や孫が贈与を受けた場合には特例税率が適用され、それ以外のケースでは一般税率が適用されます。また、贈与額が大きくなるほど税率も段階的に高くなるため、同じ110万円を超えた贈与であっても、状況によって税負担は大きく異なります。 このように、贈与税は「110万円を超えたら必ず同じ税金がかかる」という単純な仕組みではありません。「誰から」「いくら」「どのような目的で」贈与を受けたのかによって、適用される税率や税額が変わる点を理解しておくことが重要です。次に、特例税率と一般税率の違いについて、具体的に見ていきましょう。特例税率
特例税率は、祖父母や両親から孫や子どものように、「直系尊属」からの贈与が行われた場合に適用される税率と控除額です。 特例税率の税率と控除額は以下の通り。 左側の金額は、110万円の基礎控除を差し引いたのちの金額となります。 金額 税率 控除額 200万円以下 10% 0円 400万円以下 15% 10万円 600万円以下 20% 30万円 1,000万円以下 30% 90万円 1,500万円以下 40% 190万円 3,000万円以下 45% 265万円 4,500万円以下 50% 415万円 4,500万円超 たとえば、親から子どもへ1,000万円の土地を贈与されると以下のような計算で課税額を算出できます。 1,000万円 – 110万円 = 890万円 890万円 × 30% − 90万円 = 177万円 特例税率が適用された場合、1,000万円の贈与が行われると177万円の贈与税が発生することになります。一般税率
一方の一般税率は、配偶者間や兄弟間、友人間といった「直系尊属以外」からの贈与が行われた場合に適用される税率と控除額です。 また「直系尊属」であっても、受け取り側が未成年の場合にはこちらの一般税率が適用されます。 一般税率の税率と控除額は以下の通りです。 金額 税率 控除額 300万円以下 15% 10万円 400万円以下 20% 25万円 600万円以下 30% 65万円 1,000万円以下 40% 125万円 1,500万円以下 45% 175万円 3,000万円以下 50% 250万円 3,000万円超 55% 400万円 たとえば、兄から弟へ300万円の自動車が贈与されると以下のような計算で課税額を算出できます。
300万円 – 110万円 = 190万円
190万円 × 20% − 25万円 = 13万円
一般税率が適用された場合、300万円の贈与が行われると13万円の贈与税が発生することになります。
贈与税の節税手段
このように、110万円以上の贈与が行われればそれぞれの条件に応じた税率と控除額が適用され、算出された贈与税を支払う必要が生じるわけですが、せっかく無償で受け取った資産ですので、なるべく税金は支払いたくないという人がほとんどでしょう。 では、贈与税にはどのような節税手段が考えられるのでしょうか。分割贈与
ひとつは、贈与を分割して行う節税手段です。 贈与税は1年間のうちに受け取った資産の金額によってかかる税金ですから、1年間の贈与額を110万円以下に抑えられれば、税金を支払う必要はなくなります。 この仕組みを使うことで、将来的に多額の資産を移転したい場合でも、計画的に贈与を行えば贈与税の負担を軽減することが可能です。たとえば1,000万円の贈与予定がある場合、贈与の時期を分けて、1年あたり100万円ずつ、あるいは100万円、90万円といった形で金額を調整すれば、贈与税が課されることはありません。兄弟姉妹や子どもなど複数人へ分散して贈与するケースでも、同様の考え方が活用できます。 ただし、この方法を選ぶうえではいくつかのリスクや注意点も存在します。毎年同じ金額・同じ時期に贈与を行っていると、実質的には「定期贈与」とみなされ、税務調査の際に否認される可能性があります。そのため、贈与契約書を作成する、通帳に記録を残す、贈与の目的を明確にするなど、事前の対策が重要です。 また、贈与を受けた側は、金額によっては確定申告が不要なケースもありますが、内容を正しく理解していないと申告漏れにつながるおそれがあります。特に2025年以降は税制や運用の見直しが行われる可能性もあるため、最新情報を把握しておくことが求められます。 新築資金や教育資金、将来の遺産相続を見据えた資産移転など、目的に応じて贈与の方針を立てることが大切です。判断に迷う場合は、税理士法人が開催するセミナーに参加したり、代表的な事例をシェアしている専門家に相談したりすることで、自分に合った方法が見えてくるでしょう。贈与は「知らなかった」では済まされない分野だからこそ、慎重かつ計画的に進めることが重要です。
相続時精算課税制度の活用
相続時精算課税制度とは、贈与する側が1月1日時点で60歳以上であり、贈与を受ける側が贈与者の直系卑属かつ1月1日時点で成人である場合に選択できる贈与税の制度です。主に父母や祖父母など家族から、まとまった金額の資産をもらっ場合に検討されることが多く、将来の相続を見据えた贈与方法のひとつとして位置づけられています。 この制度を利用する最大のメリットは、贈与を受けた際の特別控除額が2,500万円になる点です。つまり、累計で2,500万円までの贈与であれば贈与税はかからず、贈与時点での税負担を大きく抑えることができます。住宅取得資金や事業資金など、多額の金を一度に受け取るケースでは、非常に有効な制度といえるでしょう。 また、贈与する側が亡くなって資産を相続する際には、贈与を受けた資産額に相続資産を加算して相続税が算出されることになりますが、納税済みの贈与税額は相続税額から控除されます。この仕組みにより、贈与税と相続税を二重に支払う必要がないよう配慮されています。 一方で、相続時精算課税制度を選択するには期限内に所定の手続を行う必要があり、初回の贈与を受けた翌年の確定申告期間中に税務署へ届出を行わなければなりません。期限を過ぎると制度の適用は認められないため、注意が必要です。延長は原則として認められていないため、事前の準備が重要となります。 さらに、この制度を一度選択すると暦年贈与へ戻すことはできず、年間110万円の基礎控除が適用されなくなります。そのため、長期間にわたって少額ずつ贈与するケースとは考え方が異なる点を理解しておく必要があります。家族構成や資産状況、将来の相続税額によって、どちらの制度が適しているかは異なるため、比較検討が欠かせません。 制度の詳細や最新の取扱いについては、国税庁のサイトや税理士事務所のホームページを参考にするのがおすすめです。費用面や手続の流れを含め、専門家に相談することで、より自分に合った選択がしやすくなるでしょう。





