事業資金融資で注意すべき「総量規制」について銀行員が解説

「事業資金融資を受けるときには総量規制に注意が必要と聞いたけど、それってなに?」
この記事では、そんな疑問に対し銀行員が基本的な部分からわかりやすく説明しますので、事業資金融資で資金調達する参考にしてください。

 

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目次

事業資金融資と総量規制

総量規制は、生活費や事業用の資金など、お金に困った個人が借入をし過ぎてしまうこと、
また融資を行う貸金業者が過度な貸付をしてしまうことを防ぐために作られたルールです。
個人の返済能力を超える借入を防ぐことを目的としており、金利や借入条件の設定にも影響する重要な制度です。

特に個人事業主が事業資金を調達する際には、この総量規制が関係してくるケースがあります。
開業したばかりで資金繰りに余裕がない場合や、短期の資金調達を検討している場合でも、制度を理解しておくことは重要です。
ここでは事業資金融資を検討している方に向けて、まず総量規制の基本的な意味から解説していきます。

言葉の意味と定義~事業資金融資では重要

総量規制とは、多重債務を防止し、融資を利用する個人を保護することを目的として導入された制度です。
貸金業法の改正をきっかけに導入され、貸金業者による貸付に一定の制限を設けています。

この規制の対象となるのは個人であり、個人事業主などの個人が事業資金を借入する場合も該当します。
一方で株式会社などの法人は対象外となります。そのため、事業を行っている場合でも「法人」か「個人」かによって扱いが異なる点に注意が必要です。

「どこの」「何のための」規制なのか?~事業資金融資も対象

総量規制は「貸金業界の自主規制ルール」と説明されることがありますが、
実際には貸金業法に基づいて定められた制度であり、貸金業者はこれを守る義務があります。

ここでいう貸金業者とは、事業資金などの貸付を行うために「財務局」または「都道府県」に登録している金融業者のことを指します。
具体的には、事業資金融資を取り扱う消費者金融や事業者金融(ビジネスローン会社)などが該当します。

これらの貸金業者は、借入を希望する個人や個人事業主から資金調達の相談を受けた場合でも、
総量規制を無視して融資を行うことはできません。
審査が比較的甘いと言われる業者であっても、このルール自体を無視することはできないのです。

なお、銀行や信用金庫などの金融機関も事業資金融資を扱っていますが、これらは貸金業者ではなく金融機関に分類されます。
そのため総量規制の直接的な対象ではありません。
とはいえ、個人が過度な借入をしている場合には、銀行融資の審査にも影響する可能性があります。

このように、総量規制は事業用の資金調達にも関係してくる制度であり、
個人事業主が事業資金を確保する際には理解しておく必要があります。

お借入れは年収の3分の1までです

過度な借入れから消費者の皆さまを守るために、年収などを基準に、その3分の1を超える貸付けが原則禁止されています(総量規制)。例えば、年収300万円の方が貸金業者から借入れできる合計額は、最大で100万円となります。

解説
借り手の収入や借入状況、借入目的などに応じた適切な貸付条件などに照らして、借り手が返済期間内に完済することが合理的に見込まれない貸付け、つまり、「返済能力を超える貸付け」は禁止されています。
この「返済能力を超える貸付け」に該当するか否かを判断する基準の一つとして、新たな貸付けにより借入残高が、年収の3分の1を超える場合に、原則として返済能力を超えるものとして禁止されるのが、いわゆる総量規制です。

日本貸金業協会/貸金業法について/お借入れは年収の3分の1まで(総量規制について)
https://www.j-fsa.or.jp/association/money_lending/law/annual_income.php#:~:text=%E9%81%8E%E5%BA%A6%E3%81%AA%E5%80%9F%E5%85%A5%E3%82%8C%E3%81%8B%E3%82%89%E6%B6%88%E8%B2%BB,100%E4%B8%87%E5%86%86%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

では引用や説明したことも振り返りながら、もう少し詳しく、ポイントを3つにしぼって説明していくことにします。

<総量規制~事業資金融資に関係する3つのポイント>
 ①「貸してはいけない」という規制
 ②「除外貸付」と「例外貸付」
 ③年収の3分の1を超える借入はできない

事業資金融資に関係するポイント①「貸してはいけない」という規制

総量規制は、事業資金融資を扱う貸金業者など、お金を貸す側に対して「貸してはいけない」とストップをかけるルールとして位置づけられています。
借入を希望する側ではなく、貸付を行う業者の行動を規制する制度です。

そのため、正当に申込みを行い事前の確認や財務状況のチェックを受けて事業資金融資を利用した場合、
仮に業者側の確認不足や手続き上の問題によって規制を超えていたとしても、
借入を受けた個人や個人事業主が罰せられることはありません。
借り手にとって過度な負担がかからないように設けられている制度ともいえます。

ただし、申込みの際に虚偽の情報を提出したり、税務や収入状況を偽装したりした場合は別です。
このようなケースでは融資を受けられないだけでなく、最悪の場合は詐欺などの犯罪に問われる可能性もあります。
安心して資金を確保するためにも、正確な情報を提示することが重要です。

現在では、多くの貸金業者がインターネットやオンラインで事業資金融資の相談や申込みを受け付けており、無料相談などのメニューを用意している場合もあります。
こうした仕組みを利用すれば、事前に借入条件や金利、返済期などを確認できるため不安を減らしながらスムーズに資金調達を進めることができます。

また、資金調達には事業資金融資だけでなく、出資や事業承継に関する資金確保など、さまざまな選択肢が存在します。
事業の取り組みをこれから開始する場合や、まとまった資金が必要になる場面では、自社の財務状況や事業計画に合わせて安全な方法を選ぶことが大切です。
正規の貸金業者が意図的に総量規制を逸脱することは基本的に考えられません。
金融庁への登録や監督があり、債権管理や貸付条件の設定なども厳しく管理されています。

いわゆる「闇金」と呼ばれる業者は別です。
闇金は正規の登録を受けていないため、総量規制や金利の上限などのルールが守られていないケースが多く、借入後に大きな負担がかかることもあります。
インターネット広告やサイトマップのない不審なサイトなどからの申込みには注意し、安全な業者を選択することが重要です。
事業資金融資を円滑に利用するためには、こうした制度の存在を理解し、信頼できる貸金業者へ事前に相談することが大切です。

事業資金融資に関係するポイント②「除外貸付」と「例外貸付」

この規制には「除外貸付」と「例外貸付」という特別に規制の対象外となる貸付(事業資金融資)があります。2つとも同じような呼び方でわかりにくいので、それぞれ説明していきます。

除外貸付

除外貸付けとは、人間が生活していく根幹の部分、つまり真に必要なお金として、規制の対象外になるもので、住宅ローンなどが該当します。

総量規制にかかわらず、お借入れできる貸付けの契約があります
総量規制になじまない貸付け(総量規制の「除外貸付け」)や、顧客の利益の保護に支障を生ずることがない貸付け(総量規制の「例外貸付け」)については、たとえ、年収3分の1を超えても返済能力があると認められれば貸金業者から借入れすることができます。

総量規制の「除外貸付け」に分類される契約

次の貸付けは、総量規制になじまない貸付けとして、総量規制の「除外貸付け」に分類されます。総量規制にかかわらず借入れが可能で、借入額が借入残高に算入されないため、その後の借入れには影響を与えません。
①不動産購入のための貸付け(いわゆる住宅ローン)
②自動車購入時の自動車担保貸付け(いわゆる自動車ローン)
③高額療養費の貸付け
④有価証券を担保とする貸付け
⑤不動産(個人顧客または担保提供者の居宅などを除く)を担保とする貸付け
⑥売却予定不動産の売却代金により返済される貸付け

日本貸金業協会/貸金業法について/総量規制が適用されない場合について
https://www.j-fsa.or.jp/association/money_lending/law/total_regulation.php

例外貸付

いっぽうの例外貸付とは、利用者の利益を保護する目的があれば規制を超えて例外的に借入できるものです。
代表的なものでは、個人がすでに事業資金融資を利用していて、今度事業資金融資を受けると規制を超える(年収の3分の1を超える)場合であっても、事業計画などで返済が可能だと貸金業者が判断した場合には、例外的に事業資金融資の借入が可能になる場合があります。
また複数の事業資金融資をまとめて一本化するいわゆる「おまとめローン」も例外貸付のひとつです。

総量規制の「例外貸付け」に分類される契約

次の貸付けは、顧客の利益の保護に支障を生ずることがない貸付けとして、総量規制の「例外貸付け」に分類されます。総量規制にかかわらず借入れは可能ですが、借入額が借入残高に算入されますので、借入残高が総量規制の基準を超過した場合、その後、「除外貸付け」や「例外貸付け」を除いて借入れができなくなります。
①顧客に一方的に有利となる借換え
②借入残高を段階的に減少させるための借換え
③顧客やその親族などの緊急に必要と認められる医療費を支払うための資金の貸付け
④社会通念上 緊急に必要と認められる費用を支払うための資金(10万円以下、3か月以内の返済などが要件)の貸付け
⑤配偶者と併せた年収3分の1以下の貸付け(配偶者の同意が必要)
⑥個人事業者に対する貸付け(事業計画、収支計画、資金計画により、返済能力を超えないと認められる場合)
⑦新たに事業を営む個人事業者に対する貸付け(要件は、上記⑥と同様。)
⑧預金取扱金融機関からの貸付けを受けるまでの「つなぎ資金」に係る貸付け(貸付けが行われることが確実であることが確認でき、1か月以内の返済であることが要件)

日本貸金業協会/貸金業法について/総量規制が適用されない場合について
https://www.j-fsa.or.jp/association/money_lending/law/total_regulation.php

事業資金融資に関係するポイント③年収の3分の1を超える借入はできない

そして最も重要、というより最も知られているのが「事業資金融資を含めて、個人の年収の3分の1を超える貸付はできない」という点です。
ここで注意すべきなのは、個人の借入はすべて含まれるという点(除外貸付、例外貸付は除く)なので、個人事業主が事業資金と、個人的なカードローン、クレジットのキャッシングで年収の3分の1を超えたなら、次の事業資金融資は受けられないのです。
ただしここでいう次の事業資金融資とは、あくまで貸金業者が扱う事業資金融資であり、金融機関の事業資金融資ではありません。
とはいえ、そもそも年収の3分の1を超える事業資金融資がある人なら、金融機関で追加の事業資金融資を受けるのもむずかしいことが予想されます。

Q2-12. 銀行(信用金庫、信用組合、労働金庫、農協等)からの借入れも合わせると、借入残高が年収の3分の1を超えてしまいます。これ以上の借入れはできないのですか?

A2-12. 総量規制は、貸金業者からの借入れを対象としており、銀行の貸付けは貸金業法の規制(総量規制)の対象外です。したがって、銀行等からの借入れを合わせた結果、借入残高が年収の3分の1を超えていたとしても、ただちに総量規制には抵触しません。

また、銀行のカードローンも、一般の銀行等の借入れ同様、総量規制の対象とはなりません。

金融庁/貸金業法Q&A
https://www.fsa.go.jp/policy/kashikin/qa.html#:~:text=A2%2D12.%20%E7%B7%8F%E9%87%8F%E8%A6%8F%E5%88%B6%E3%81%AF,%E3%81%AB%E3%81%AF%E6%8A%B5%E8%A7%A6%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%9B%E3%82%93%E3%80%82

まとめ~事業資金融資を検討するときは注意

総量規制はカードローンやキャッシングなどのサービスを紹介するサイトや本で多く解説されている制度ですが、
今回説明したように事業資金融資にも関係してくる重要なルールです。
個人事業主が運転資金や設備資金などの事業資金を借入する際には、制度の内容や資金の使途を理解しておくことが大切です。

実際に事業資金の借入を検討する場合は、金融機関や貸金業者の窓口へ相談し、各種サービスの一覧や条件を確認しながら進めることが重要になります。
借入条件や金利、手数料、返済期間などは金融機関によって異なり、申込方法や審査の内容にも違いがあります。
そのため、事前に必要な知識を身につけ、疑問点があれば質問しながら進めることが安心につながります。

また、事業資金の確保という観点では、融資だけでなく地域ごとの支援制度や補助金などを利用できる場合もあります。
こうした制度は申請が必要になるケースが多く、税金や設備投資の負担を軽減できる可能性もあります。

事業資金の調達は事業運営に大きく関わる重要な要素です。
金融機関との取引内容や借入条件をよく確認し、制度を正しく理解したうえで申込を行うことが、安定した資金繰りにつながります。