かつては「融資」といえば、契約にあたって担保や保証人を伴うのが一般的でしたが、2024年以降の日銀の政策金利引き上げを受け、現在は「無担保・無保証」であっても、より高度な事業収益性とキャッシュフローが審査で重視されるようになっています。 融資に際して担保や保証人が必要な理由は、債務者が返済困難に陥った際に、土地や定期預金といった価値のある資産で弁済するためであるほか、保証人となった第三者に代理で返済を行なってもらうためです。 つまり、債権者側からすると「無担保・無保証融資」を実行することは、貸し倒れリスクを直接被ることを意味します。そのため、市場金利上昇に伴う逆ザヤリスクなどを防ぐべく、近年では金融機関もAI審査の導入やスコアリングの精緻化を加速させています。 そのようなリスクを背負うにもかかわらず、なぜ金融機関やノンバンクは「無担保・無保証融資」が実行可能なのでしょうか。 今回は、その理由について詳しく解説していきたいと思います。   【関連記事】 金融機関の借入審査について解説

金融機関やノンバンクが提供する無担保・無保証融資

民間金融機関の融資は大きく分けて2つあります。銀行や信用金庫などの金融機関だけでなく、消費者金融や信販会社などの貸金業者もさまざまな金融サービスや融資商品を取り扱っており、利用者の状況や資金調達の目的によって借入方法が異なります。 ひとつは「プロパー融資」です。 プロパー融資は担保も保証人も不要な融資であり、一般的に民間金融機関の「無担保・無保証融資」といえば、こちらのプロパー融資を指します。銀行が自らの判断で与信を行い、企業や個人の信用情報や取引状況、預金口座の残高などを確認したうえで融資を実施するのが特徴です。そのため、借入の可否は金融機関の厳格な審査によって決まり、利用者の高い信用力が重要になります。 反対に、担保の用意は債務者や金融機関の判断によるものの、借入にあたって信用保証協会からの保証を必ず受ける必要がある融資を「信用保証協会保証付融資」といいます。これは銀行と信用保証協会が連携して行う融資制度であり、万が一返済が困難になった場合には保証協会が代位弁済を行う仕組みです。そのため銀行にとってはリスクを抑えながら融資を実行できる金融サービスといえます。 また、政府系金融機関である日本政策金融公庫の創業者向け融資(旧「新創業融資制度」)は、2024年4月の制度改定により「新規開業資金」等へ統合・拡充されました。これらの制度も、一定の要件を満たせば無担保・無保証での資金調達枠として機能し、主に中小企業や個人事業主の事業資金を支援する目的で提供されています。 そのほか、ノンバンクの事業資金融資である「ビジネスローン」は、そのほとんどが基本的には「無担保・無保証融資」です。ノンバンクには消費者金融や信販会社などが含まれ、ビジネスローンや事業用カードローンといった商品を通じて資金を借りることができます。銀行と比べると審査スピードが早いケースも多く、最短即日で資金を振込してもらえるサービスもあります。 ただし、金融機関やノンバンクが取り扱うこれらの融資でも、赤字決算が続いているなど信用力に乏しい法人が借入をする際には、代表者の連帯保証や不動産などの担保を求められる場合があります。金融機関は貸金業法や銀行法などの法律に基づき与信審査を行うため、利用者の収益状況や事業の安定性を総合的に確認したうえで、融資の内容や利用限度額が決定されます。

「無担保・無保証融資」を実行する理由

では、どうして金融機関やノンバンクは無担保・無保証で融資を実行するのでしょうか。銀行や信用金庫、消費者金融や信販会社などの貸金業者は、それぞれ異なる金融サービスを提供していますが、共通しているのは「信用」を基準に与信判断を行っている点です。担保や保証人がなくても借入が可能な理由は、利用者の信用情報や収入状況、事業内容などを精緻に確認する仕組みが整っているためです。

1.「物的担保」の代わりに「信用」を担保にしている

土地や建物といった担保や第三者による保証も不要な「無担保・無保証融資」ではありますが、当然ながら申し込み時には「損益計算書」や「貸借対照表」といった決算書などの各種書類の提出を求められます。銀行やノンバンクではこれらの資料をもとに企業の財務状況や事業の安定性を確認し、融資の可否を判断します。 また、日本政策金融公庫の融資等を利用する際には、決算書の代わりに「事業計画書」の提出が必要になります。創業間もない企業の場合は過去の実績が少ないため、将来の売上見込みや資金計画などの内容が重要になります。 「無担保・無保証融資」の審査時は、これらに記載された数字や計画などを基にして借主の「信用度」を計り、それを実質的な担保として融資の合否を判断するわけです。金融機関やノンバンクは、信用情報機関への照会も行い、過去の借入履歴や返済状況などを確認します。いわゆるブラック状態になっていないか、延滞や税金の未納がないかといった点も審査の重要なポイントです。 つまり「無担保・無保証融資」を利用するには、物的・人的な担保が不要だと認められるだけの「長期にわたる返済能力の有無」や「実現性の高い事業計画」が必須になります。

2.審査通過のハードルを高く設定している

上記の通り「信用」を担保にする以上、「無担保・無保証融資」の審査通過は決して容易ではありません。銀行や信用金庫などの金融機関はもちろん、消費者金融や信販会社などの貸金業者においても、借入の申込内容や利用者の信用情報を細かく確認したうえで与信判断を行っています。 特に金融機関のプロパー融資に関しては非常に厳しい審査が行われます。銀行は預金者から預かった資金を原資として融資を行うため、貸し倒れのリスクを極力抑える必要があるからです。 (※ただし2026年現在では、地方銀行を中心に「DX投資」や「GX(脱炭素)投資」を目的とした特定枠において、将来の成長性を見込んで中小企業向けにもプロパー融資が実行されるケースが増えつつあります) 通常は、少なくとも3期以上の決算の実績がなければプロパー融資の審査通過は難しいといわれており、たとえ創業時から高い利益を上げていたとしても利用のハードルは高いものです。このように、金融機関のプロパー融資は借主の「信用」を厳しく見極め、利用できる企業を厳しい基準で選定し、リスクを回避しているからこそ「無担保・無保証」での実行が可能になっています。 一方、ノンバンクの「無担保・無保証融資」は金融機関のプロパー融資に比べると、審査に通過しやすいという特徴があります。ノンバンクのビジネスローンは、AIスコアリングなどを活用して最短即日で審査結果が出るケースもあり、スピードを重視した資金調達が可能です。 ただし審査に通過しやすいといっても、ノンバンクも各種データに基づく「信用度」に応じて貸し出すわけですから、担保や保証つきの融資に比べれば厳しく審査されることに変わりありません。 また、金融機関のプロパー融資は「絶大な信用度」を基にして高い基準を満たした企業に融資を実行することから、信用保証協会の保証付融資よりも高い金額を借入できるうえに金利も低くなる一方、ノンバンクのビジネスローンは借入限度額が低く、金利は高め(利息負担が大きい)に設定される傾向にあります。 いずれにせよ、金融機関もノンバンクも「無担保・無保証融資」の実行に対しては慎重であり、担保や保証を必要とする融資よりも審査のハードルを上げることによって、リスクコントロールを行っていることがわかります。

無担保・無保証融資を利用する際の注意点

無担保・無保証融資は、担保や保証人を用意する手間なく資金を借りることができる便利な資金調達手段ですが、利用する際にはいくつかの注意点があります。 まず、無担保融資では必ず信用情報機関への照会が行われます。過去に他社での借入の延滞やリスケ(返済条件の変更)を行っている場合や、税金の滞納がある場合には、審査に通過できないケースが大半です。 さらに、無担保融資は担保付き融資に比べて金利(利息)が高めに設定される傾向があります。特にノンバンクのビジネスローンを利用する際には、毎月の返済額や返済期間を事前に計算し、自社のキャッシュフローを圧迫しない無理のない資金計画を立てることが大切です。資金化までの時間に猶予がある場合は、銀行融資や信用保証協会保証付融資など、より低金利な調達方法もあわせて検討することも重要です。 最近ではインターネットから申込が完結し、審査後すぐに口座へ振込されるサービスも増えています。しかし、スピードや便利さだけで選ぶのではなく、金利や利用条件を十分に確認し、正規の登録を受けた金融業者(日本貸金業協会加盟業者など)であるかを必ず事前に確認するようにしましょう。

金融機関やノンバンクが無担保・無保証で融資可能な理由のまとめ

今回は金融機関やノンバンクが「無担保・無保証」で融資を実行できる理由について解説しました。 担保や保証が不要であるため、融資を検討する際にはできるだけ「無担保・無保証融資」を利用したいという経営者の方も多いかと思います。実際に銀行のプロパー融資やノンバンクのビジネスローンを利用することで、不動産担保などを用意しなくてもスピーディーに事業資金を借りることは可能です。 しかしここで注意すべきは、現在の経済状況です。2026年現在、物価高騰や人件費上昇の影響が大きく企業の利益を圧迫しやすい環境下においては、審査において「一時的な売上の多寡」よりも、「金利上昇に伴う借入後の利息負担に耐えうるだけの営業利益率(キャッシュフロー)を維持できているか」が最重要項目として見られます。 無担保だからこそ、返済能力や事業の将来性など、企業や経営者の「信用」そのものが担保となります。そのため、審査にあたっては担保や保証を必要とする融資よりもシビアに財務状況を見極められることを理解しておきましょう。 無担保・無保証融資を検討する際には、自社の財務状況や資金繰り表を正確に把握し、金融機関が重視するポイントを押さえた上で申し込むことが重要です。銀行融資とノンバンクでは金利や利用限度額、審査のスピードが大きく異なるため、それぞれの特性を理解し、自社の状況に最適な資金調達方法を選択してください。

 

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