2024年になり新たに事業を営む、あるいは新規事業や事業拡大を考えている方にとって必要なのが資金調達です。主に4つの資金調達手段があり、それぞれについて詳しく解説していきます。そして資金調達の動向は、毎年大きな流れがあり、それを確認しておく必要があります。そこで最後に2024年の資金調達の動向も確認しましょう。
資金調達が必要になるのはどんな時?
通常の事業活動で収益が出ることで現金が調達できるのがいちばんですが、どうしても企業活動ではその他にも資金調達が必要な場合があります。どんなときに別途資金調達が必要でしょうか?まずは考えられるパターンを確認しましょう。
開業や新規事業を立ち上げる時
最初に新たに事業を起こすときには当然初期投資の資金が必要です。これは開業の時も同様で、設備等を購入したり、最初の売り上げが出るまでの間の固定費や光熱費などの支払いに必要な資金が必要です。
運転資金が不足する時
いくら計画を決めて売上を伸ばしたくても景気動向や需要の動向などの社会事情により売り上げが増減してしまいます。用意していた運転資金に影響を受ける場合もあり、そうなると事業継続が困難になるので、追加の資金調達を行う場合があります。
事業を拡大する時
これまでの事業が成長する見込みがあれば、当然事業拡大を行います。その際に追加で設備などを購入する必要があり、通常の利益で得た資金だけでは足りない場合が多く、その場合は資金調達を行います。
資金調達の方法①補助金・助成金
資金調達の方法としてぜひ活用したいのが補助金と助成金です。自治体などの公的機関や民間団体から支給される資金で、融資とは違うので原則返済不要ですが、当然補助金や助成金の目的に合致している必要があります。ここでは似て非なる補助金と助成金の違いについて紹介しましょう。
補助金とは
補助金は、主に公的機関(経済産業省、地方公共団体)の政策目的にあった事業を行うものに資金を補助するものです。新規事業、創業促進、雇用の安定を目的としていますが、申請しても一定の審査があり、必ず受給できるわけではありません。そして交付決定後でも実際の資金を受けるまでは期間があります。原則補助金は後払いだからです。また事務処理も適正に行わないと受給が受けられない場合があります。
助成金とは
助成金は、企業の人材育成や労働環境の改善、研究開発などに給付するもので、補助金よりも審査に通りやすいと言われています。但し一部の資金補助なので補助金とは金額が低く、やはり補助金同様に後払いのため、受給するために行なう事業に必要な資金は別途確保する必要があります。
資金調達の方法②負債(融資)
資金調達の方法として負債(融資)は、一般的です。いわゆる借金なので負債となり、返済しなければいけませんが、最も簡単で現金が手に入りやすい方法です。融資にはいろいろな種類がありますが主に次の4点に分けられます。
1.公的機関からの融資
2.銀行からの融資
3.ノンバンクのローン
4.社債の発行
詳しくみていきましょう。
1.公的機関からの融資
政府系の金融機関や地方公共団体の制度融資で、中小企業を対象にしたものが多いです。また金利が低いのと新規事業用の融資などを用意しているので、しっかりとした事業計画書を提出すれば融資が受けられ、事業開始にはとても役立つでしょう。ただ資金調達までの手続きが面倒なのと、現金が手に入るまで時間がかかるデメリットがあります。
2.銀行からの融資
一般的な資金調達方法は銀行からの融資です。銀行が信頼関係のある大手企業などに行うプロパー融資や中小企業限定の信用保証協会付きの融資があります。特に後者の場合は銀行への貸し倒れリスクがないために融資が受けられやすいです。
3.ノンバンクのローン
ノンバンクは銀行以外で預貯金業務を行わない金融機関の総称です。消費者金融なども含まれます。特に小口の場合は融資が即日に行われる消費者金融ローンも活用の選択肢のひとつです。ただし、金利は高めなので注意しましょう。その他不動産を持っていれば不動産担保のノンバンクローンもあります。
4.社債の発行
法人格を持つ会社の場合、社債を発行することで資金調達を得る方法があります。債券を発行して投資家などに買い取ってもらい、償還期間が来たら利息をつけて返済する制度です。あくまで負債なので株式とは違いますが、一般的な融資の場合は通常毎月返済する必要があるのに対して社債は長期借入金となり、短いもので2年、長ければ30年間返す必要ありません。また利息を低く抑えられるメリットがあります。
資金調達の方法③資産の売却
資金調達の方法で、多くの資産を持っているのであれば資産を売却して現金化する方法があります。
1.不要な資産の売却
2.事業譲渡
3.ファクタリング
4.リースバック
5.手形割引
以上、5つの項目について詳しくみていきましょう。
1.不要な資産の売却
不要資産の売却は、実際に使っていない資産を売って現金化する方法で最もわかりやすい方法です。実際に使っていない土地・建物の不動産やゴルフ会員権や有価証券などの動産などがあります。
2.事業譲渡
事業譲渡は持っている事業の一部または全部を有償で譲渡する方法です。他の企業に買収してもらうあるいは企業の合併が該当し、設備などの有形資産と人材・ノウハウと言った無形資産が含まれます。多くの場合は現金での受け取りではなく相手企業の株式になる場合があります。
3.ファクタリング
ファクタリングは、持っている売掛債権の現金化です。待っていれば入金されるものですが、急にお金が必要な時にファクタリング会社に手数料を払って現金化します。
4.リースバック
リースバックは、所持している不動産や設備、車両などの動産をリース会社に売却しながらも引き続きリース契約で使用するという方法です。リース料は発生しますが、一時的に売却した資金が手に入るので、急な資金が必要な時に活用できます。
5.手形割引
手形割引は、持っている受取手形(手形債権)が満期になって資金ができる前に、銀行や手形割引業者に手数料を払って現金化する方法です。ファクタリングに似ていますが、手形が不渡りになった場合は、支払手形を発行した人にかわって弁済するリスクがあります。その代わりファクタリングよりは手数料が低い傾向があります。
資金調達の方法④出資
資金調達には出資という方法があります。出資は融資と違い自己資金(資本)になるので返済をする必要がありませんが、事業の成長が期待されるので事業の将来性が重視されます。
1.クラウドファンディング
2.第三者割当増資
3.エンジェル投資家
4.ベンチャーキャピタル(VC)
次の4項目について詳しくみていきましょう。
1.クラウドファンディング
事業者自らがファンドを作って個人投資家から資金を集める方法で、ネットで簡単にできるため、企業のほか個人でも資金調達を行いやすい方法です。また賛同者が不特定多数から得られるメリットがあり多くの人が活用しています。
2.第三者割当増資
第三者割当増資は株式を新たに発行して売却する方法です。株式なので社債と違い返済の必要はありません。ただし株主が増える結果となるので、経営者の裁量に影響を受けるというデメリットがあります。企業に収益が出れば配当金を支払う必要があります。
3.エンジェル投資家
起業前や起業したばかりの事業者に資金を出資する投資家をエンジェル投資家と言えます。特に起業時に融資が受けられない場合でも、投資家が納得できるような事業計画やビジョンがあれば、資金調達してくれます。ただ基本的に個人投資家なので、受けられる資金に制限があります。
4.ベンチャーキャピタル(VC)
ベンチャー企業が利用できる出資方法として投資専門会社が行うのがベンチャーキャピタルです。将来有望な企業を発掘し、そのベンチャー企業に投資します。最終的にベンチャー企業が上場することで出資したことで得た株式の価値が上がり、収益が得られることを狙うため、審査は厳しめです。
2024年の資金調達の動向
資金調達の基本は毎年同じですが、年によって資本調達の動向に違いがあります。2024年の資金調達の動向についてどういう流れになっているか確認しましょう。
4大補助金を中心にした補助金制度の拡充も後払いという現実
2024年はコロナの特別枠はなくなった代わりに、インボイス制度導入、物価高、GX(グリーントランスフォーメーション)、DX(デジタルトランスフォーメーション)といった経営環境を整備するための補助金枠が拡大しています。そして、①ものづくり補助金、②IT導入補助金、③小規模事業者持続化補助金、④事業再構築補助金の4大補助金についても2024年度の予算で拡充の予定となっています。
マイナス金利政策が解除される可能性と資金調達への影響
2024年にはマイナス金利政策が解除される可能性があります。アベノミクスのひとつとしてマイナス金利で金融を緩和していたために、資金調達しやすい状況にあり、経済の活性化につながっていました。しかし急激な物価高によりデフレマインドは払拭されつつあるため、金利政策が解除される可能性が出てきました。そのため金利上昇が考えられ資金調達に影響が出てくる可能性が高いです。その場合は融資以外の資金調達を考える必要があるでしょう。
AI分野への投資が高まりつつある
近年の動向としてはAIへの投資が高まりつつあります。AI技術は不可欠な要素となりつつあり、AIセクターへの投資が高まりつつあります。AIという技術革新に加え、経済全体の成長エンジンとしても機能しつつあるAI投資は加速が続くとみられ、注目しておきたい動向です。
資金調達2024年の動向まとめ
資金調達は、補助金・助成金、融資、資産の売却、出資という4つのパターンがありますが、融資が一般的なことは変わりありません。しかし2024年にゼロ金利政策が解除される可能性があり、そうなると融資の金利も上がるので、融資以外の資金調達方法を考えなくてはなりません。2024年に拡充された補助金事業に今行っている事業が近いかどうかを確認する必要もあります。また、ますます投資熱が高まりつつあるAI業界の動向も自社との関連性を確認しながら注目しなければなりません。いずれにせよ自社にとって最適な資金調達を検討してみましょう。