合同会社とは2005年の法改正で作られた比較的新しい会社形態です。合同会社は起業のしやすさがメリットですが、その反面、融資を受けにくいというデメリットも存在しています。会社を軌道に乗せるには運転資金は必要不可欠なので、何とかして資金調達をしなければなりません。そのために保証人が必要となる事も多く、審査の際には大きなポイントです。今回は合同会社の融資に際しての保証人や審査についてまとめていきます。
目次
合同会社の融資における保証人や審査
合同会社は株式会社よりも信頼性が低い会社形態と言われています。そのため、銀行の融資のハードルも高く、保証人を求められる事も多くなっています。近年では法改正の影響もあり、融資の際に連帯保証人が求められないケースも増えているのです。しかし、合同会社には保証人の準備が必要な場合が多く、資金調達のためにはこうした情報は知っておかなければなりません。
合同会社とは?
まずは合同会社について簡単に解説していきましょう。合同会社は、株式会社、合名会社、合資会社とならぶ会社形態で、会社の所有者と経営者の関係に特徴があります。会社の所有者と経営者が一致している事が合同会社の特徴となっていて、有限責任である事も特徴的です。合同会社のメリットとしては企業に際して資金が少なくて済むという事や運営資金もそれほど必要がない点です。
合同会社の融資は難しい?
合同会社は株式の発行ができないために、資金調達が難しいと言われています。そのため、資金調達には銀行の融資に頼る事になりますが、これにも高いハードルが存在しています。合同会社はスピード感のある起業ができる事がメリットですが、そのために実績などがほとんどないケースが多いのです。銀行の審査基準は、実績や資金力が大きな割合を占めます。合同会社と銀行の融資審査は、非常に相性が悪いと言わざるを得ません。
また、銀行側の体制にも問題があります。合同会社というのは比較的新しい会社形態であるために、銀行側でも受け入れ態勢が不十分なのです。しかも、一定の資金力や実績のある起業家は合同会社ではなく、株式会社を設立するために、小規模な合同会社が多いという事も銀行側が体制をしっかりと整えない原因になっています。銀行側にとっても大口の融資や数の多い会社形態を優先させる方がいいからです。
合同会社として融資を通せたとしても少額になってしまう事は覚悟しておく必要があります。資本金も少なく、自己で資金調達ができない会社という印象が強いからです。そのために、保証人も含めて、融資の審査を受ける際には様々な方策を取っておく必要があるのです。経営者としては保証人になる事も多く、様々なリスクを理解しておく必要もあります。
合同会社の融資には保証人が必要?
合同会社として融資の審査までこぎつけても、まだハードルがあります。それが保証人の存在です。中小企業が融資を受ける際に、安全に資金調達がしたければ2つの方法があります。
・銀行融資
・日本政策金融公庫
これ以外の融資方法だとノンバンク系の融資があります。消費者金融のビジネスローンは大手の会社であれば、危険性はほとんどありません。しかし、金利が高く設定されている場合も多く、実績のない合同会社であると、なおさらこの傾向が強くなります。
まずは銀行の融資の際の保証人について見ていきましょう。銀行が直接融資するプロパー融資を受けることが多いでしょう。先述した通り、合同会社と銀行の融資は相性が良くないため、かなり高いハードルがあると言われます。しかし、銀行融資の審査が決して通らないというわけではありません。保証人を立てることで融資のハードルは下がります。
銀行側が重視するのは「返済力」です。この返済力を銀行側は「会社の利益」で判断します。しかし、これだけが判断材料でない事は確かです。それが「信用」というものです。そして信用を担保してくれるのが、保証人の存在です。通常の銀行融資であると、経営者が保証人に設定される場合が多くあります。しかし、信用保証協会を保証人に選定する場合も多いです。
こうしたことで銀行側は返済の保証をしてもらいます。保証人や担保などを用意しなければ、合同会社は融資を受ける事が難しい事を覚えておかなければなりません。
日本政策金融公庫の融資とは?
日本政策金融公庫で融資を受ける際の保証人について解説していきましょう。日本政策金融公庫は合同会社にとって、株式会社と同等の条件で融資を受ける事ができる心強い味方です。日本政策金融公庫は公的機関のために、安心して融資を受けられるという利点もあります。そして、審査がそれほど厳格でないところが合同会社と相性がいいとされています。
日本政策金融公庫の審査では、第三者の保証人を立てなくてもいい場合があります。保証人には法人代表者の保証人と第三者の保証人があります。第三者の保証人というのは、近年では避けられる傾向にあります。これは第三者の連帯保証人が破産するケースが社会問題化したからです。
そのため、基本的には法人代表者、つまり合同会社であれば経営者が保証人になるという事です。これは銀行でも日本政策金融公庫でも変わりません。日本政策金融公庫の中で、審査が最も簡単で第三者による保証人を必要としてないのは、以下の3つの制度です。
・新創業融資制度
・マル経融資(小規模事業者経営改善資金)
・挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)
新創業融資制度は、事業を始めたい人や始めて間もない人向けの融資制度です。融資を受ける際には一定の自己資金があるという条件がある事に注意が必要です。割合は創業資金総額の10分の1の金額とされています。そして、この制度のメリットは法人が申し込む場合には、法人代表者が連帯保証人にならなくてもよいという点です。担保や保証人も不必要であり、創業したばかりの法人には非常に助かる制度となっています。
マル経融資(小規模事業者経営改善資金)は、商工会議所や商工会などの経営指導を受けている事業者への融資制度となっています。小規模事業者の商工業者を対象としているために、対象となる業種が限られている事に注意が必要です。合同会社でも商工業系でなければ、適用対象となりません。メリットとしては担保も保証人も要らないという点にあります。融資金額は2000万円まで、小規模な事業者であれば十分な額と言えます。
挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)は、ベンチャー企業やスタートアップ企業などを含めた様々な対象者に向けた融資制度です。定められた融資制度を利用している事や地域経済の活性化にかかる事業を行っている事など、様々な制約があるために、自分が対象となるかのチェックが必要となります。その代わり、融資額は7200万円とかなり高額であり、中規模の会社でもしっかりとサポートしてくれます。担保も保証人も要らないことは、メリットとなっています。
合同会社の融資のポイント
合同会社の融資には保証人を立てても、融資が難しい場合も多くあります。合同会社で融資を受ける際には、3つのポイントが存在します。
それは以下の3つです。
・ビジョンの明確化
・資金の必要性
・返済原資と返済期間
この3つのポイントは銀行の信頼を得るためには必要不可欠であり、保証人の用意と共に準備しておきたいポイントです。合同会社は銀行側にとっては信用できる会社かどうかしっかり判断しなければいけない会社と見なされています。銀行側としても返済不能という事態は絶対に避けたいからです。だからこそ、融資の担当者と会う際にはしっかりと準備をした上で臨む必要があるのです。ここからは、この3つのポイントを解説していきましょう。
ビジョンの明確化
合同会社は銀行融資を受ける時に、実績という点で後れを取ってしまいます。保証人を立てたとしても、どういった目的の会社でどういった成長を見込めるのかを明確に説明する必要があります。合同会社を設立したという事は、資金的にも実績的にもまだまだ発展途上と見なされるからです。
このビジョンの明確化は、融資においては担当者の定性評価に大きな影響を与えます。定性評価とは数字ではなく、融資担当者の印象や事業の将来性などで評価する方法です。この定性評価が審査に影響を及ぼす割合が、従来よりも減少しているというデータもあるため、合同会社はより一層ビジョンの明確化を求められる事になります。
資金の必要性
事業にどのくらい資金が必要なのかはもちろん、「なぜその融資額が必要なのか」、「資金があればどのように事業が発展するのか」なども、しっかりと説明する必要があります。さらに、合同会社は融資額が少額になる事もあり、希望金額よりも低い融資金額を提案される可能性もあります。そのため、一点の隙もないほどに理路整然として説明が必要となってくるのです。
返済原資と返済計画
返済計画を明確に提示する事は、融資のハードルを大きく下げる事につながります。一般的には合同会社は小規模で、資金も少ない会社と見なされることも少なくありません。そのため、返済原資の存在はしっかりとアピールしておかなければいけません。さらに、返済計画も示したうえで、融資金額の交渉に入る事が合同会社にとっては重要です。
合同会社の融資における保証人のまとめ
合同会社の融資における保証人の存在は欠かせないものとなっています。合同会社で保証人となるのは、経営者であることも多く、そのリスクは承知しておかなければいけません。また、保証人を立てて承認されたとしても、合同会社の融資はそれほど簡単には通りません。
合同会社としての融資を受けたいのであれば、保証人はもちろん、ビジョンや返済計画などの準備をしておくと安心でしょう。今回紹介した合同会社の融資における保証人についての解説なども参考に融資を検討してみてください。