「資金繰りが苦しく、もう倒産しか残されていない…」
「不採算事業ばかりで、会社存続の道が閉ざされてしまった」
上記のように感じている経営者はいませんか?倒産間近の企業であっても、「事業再生」に全力で取り組めばまだ回復の見込みは十分にあります。
しかし、事業再生にはいくつかのコツがあり、コツを押さえた上で取り組まなければ期待通りの回復は見込めません。焦ってしまう気持ちは分かりますが、事業再生も普段の経営と同じく、きちんとした計画を立てた上で取り組むべきものなのです。
そこで今回は、数十社の事業再生に携わってきた、現役22年の経営コンサルタントが事業再生のコツをまとめました。このページで記載されている内容を実践すれば、経営状況は3年間で劇的に改善します。

■【事業再生成功のコツその1】再生できる2つの条件を理解しておく

事業再生は、どのような会社であっても成功するものではありません。以下の2つの条件を満たさなければ、事業再生に取り組んでも劇的な改善は見込めないので注意しておきましょう。

①再生できる事業が存在していること
②負債を減らせば、会社の資金繰りがある程度スムーズに回ること
例えば、赤字が大きすぎて黒字に転ずるチャンスがない事業、協力者やスポンサーが見つからない事業のみしかない場合、その会社には改善できる事業がありません。このような企業に関しては事業再生ではなく、採算のとれる新しい事業を計画する必要があるでしょう。

また、中には負債をあまり抱えていない状態でも、資金繰りがうまく回らない会社が存在します。そのような企業は、仮に事業再生によって一旦経営が回復しても、短期間で同じような状態に戻ってしまうでしょう。

「うちの会社はそもそも資金繰りに問題がある」と感じている経営者は、事業再生の前に資金繰り対策をする必要があります。具体的な資金繰り対策としては、主に以下の2つが挙げられるでしょう。

・協力企業やスポンサーを探し、資金を提供してもらう
・人員削減のためにリストラを決行する
経営者の中には、「従業員の生活を守りたいからリストラはちょっと…」と躊躇する方も見られます。しかし、事業再生が必要になったということは、倒産が間近に迫っていることを意味します。

会社が倒産してしまうと、全ての従業員の生活が脅かされてしまうので、事業再生にはある程度の覚悟を持って臨むことが必要です。

■【事業再生成功のコツその2】従業員に負担・迷惑をかけない

会社の状況によっては、事業再生のためにリストラが必要になることもあります。しかし、経営を立て直すには従業員の協力が必須であり、特に優秀な従業員は手放すわけにはいきません。

そのため、事業再生では可能な限り従業員に負担・迷惑をかけないようにしましょう。従業員に負担や迷惑をかけると、従業員側から退職の意志を示してくる恐れがあります。そうなると、もはや経営者は引き止めることができません。

世の中には、「従業員の怠慢で経営不振に陥ってしまった」と感じている経営者も多く見られます。しかし、経営不振の大きな原因は経営者であり、経営スキルが十分ではなかったために倒産に追い込まれているのです。仮に従業員の怠慢が原因であったとしても、それは会社の教育体制・人事が整っていないことがそもそもの要因でしょう。

したがって、事業再生が必要になったら、経営者は自身の責任を潔く認めることが大切です。そのような姿勢で事業再生を目指せば、従業員からの信用も得られるでしょう。

■【事業再生成功のコツその3】具体的な方法をきちんと理解しておく

事業再生の方法は複数あり、会社の状況に応じて適した手段を選ぶことが重要になります。細かく見ると数多くの手段がありますが、大きく分けると事業再生は以下の2つに分けられます。

・私的再生 当事者同士での話し合いなど、裁判所を通さずに進めていく事業再生
・法的再生 裁判所が関与する事業再生
この私的再生・法的再生の2つについて、もう少し詳しく見ていきましょう。

○私的再生

私的再生では主に、債権者と債務者の話し合いによって事業再生が進められます。例えば、銀行などの金融機関に対して支払いを遅延してもらい、そのお金を運転資金に回して事業再生を目指すといった方法です。

しかし、私的再生では必ずしも話し合いがスムーズに進むとは限らないので、かつてと比べると私的再生による事業再生は減ってきました。現在では、主に以下のようなケースで私的再生が実施されています。

・債権者の数が少ない場合
・債権者との間に信頼関係があり、話し合いがスムーズに進みやすい場合
また、上記に該当しない状況で私的整理を行う場合には、国税庁などが公開している「私的整理に関するガイドライン」を参考に進めるケースが一般的となっています。

○法的再生

法的再生で実際に講じられる手段は、大きく以下の2つに分けられます。

・清算型 破産手続や特別清算手続による再生
・再建型 民事再生手続や会社更生手続による再生
基本的には再建型が望ましいと言えますが、再建型で事業再生を目指すのであれば、以下の条件を満たしておく必要があります。

①借金が減れば、黒字に転じる可能性がある
②「債権者への配当>清算させた場合の清算配当」が成り立つ
例えば、再建型で事業再生をした結果債権者への配当が少ない場合は、債権者は協力に消極的な姿勢を見せるはずです。そうなると、再建型の法的再生はスムーズに進まないため、清算型の法的再生しか選択肢はありません。

■【事業再生成功のコツその4】専門家選びのポイントを押さえておく

一般的な企業が事業再生を成功させるには、専門家の存在が必須と言えます。経営者が事業再生に詳しければ問題ありませんが、そうではない企業は間違った選択肢を選ばないためにも、専門家の利用をおすすめします。

では、事業再生を専門家に依頼する場合、どのような専門家を選べば良いのでしょうか?専門家選びのポイントとしては、以下の3つが挙げられます。

【ポイントその1】実行部分もサポートしてくれる
専門家の中には、計画の立案のみをサポートする専門家も存在します。そのような専門家に依頼すると、肝心な実行部分は経営者自身で進める必要があるため、経営者は事業に集中できません。

経営者は本業と事業再生を同時に進める必要があるため、可能であれば実行部分もサポートしてくれる専門家を選ぶべきです。

【ポイントその2】金融機関との交渉実績
専門家に依頼したからと言って、事業再生は必ずしも成功するものではありません。事業再生では金融機関との交渉を成功させる必要があるので、各専門家の交渉力は重要な比較ポイントと言えます。

そのため、過去の交渉実績をきちんと調べてから専門家を選ぶようにしましょう。

【ポイントその3】費用面
専門家を選ぶ上で、確実に意識しておくべきポイントが「費用面」です。事業再生をする企業にはそもそもお金がないので、可能な限り費用を抑えられる専門家を選ぶべきでしょう。

専門家ごとにかかる費用、料金システムは大きく異なるので、具体的な数字をきちんとチェックしてから選んでください。

■【事業再生成功のコツその5】ゴールを明確にした計画を立てる

事業再生を検討している方は、必ず明確なゴールを設定しておきましょう。「どの状況まで回復すればゴールか」はケースによって異なるので、ゴールを明確にしておかないと、いつまで経っても事業再生に取り組むことになりかねません。

したがって、ゴールとなる「状況・期限」は事前に決めておくべきです。最終的なゴールを決めたら、次はそのゴールを達成するための目標を決めて、これからするべき行動を明確にしていきましょう。

このようにゴール・目標を設定していけば、今後の明確なスケジュールを立てられるはずです。

■【事業再生成功のコツその6】週単位・月単位で進捗をチェックする

精密なスケジュールを立てたとしても、そのスケジュールを守らなければ意味がありません。気付かないうちに行動が遅れてしまう可能性もあるので、スケジュールを立てたら必ず進捗をチェックするようにしましょう。

進捗をチェックする際には、週単位・月単位で確認することが大切です。半年や1年など長い期間で進捗をチェックすると、「気付いたときにはもう手遅れだった…」といった状況に陥りかねないので、短いスパンでチェックする必要があります。

■【事業再生成功のコツその7】リスケジュールも検討しておく

リスケジュールとは、企業が債務を返済不能の状況に陥った際に、銀行などの債権者に対して返済を猶予してもらうことです。返済義務がなくなるわけではありませんが、一時的に返済をストップさせれば運転資金に回せるお金が増えるので、経営が改善する可能性が高まります。

しかし、リスケジュールは必ずしも成功するものではありません。債権者の協力が必要不可欠ですし、銀行などは経営回復の見込みがない限り、基本的にはリスケジュールを認めないためです。

債務が多い企業にとって、このリスケジュールは事業再生のために必要でしょう。ただし、銀行に認めてもらうためには経営改善計画書の提出などが求められるので、事業再生を決めた時点で早めに動き出すことが大切です。

■【事業再生成功のコツその8】何よりも早めの行動を意識する

事業再生の必要性に迫られた企業には、迷っている暇がありません。迷って時間が経過してしまうと、さらに以下のような状況に追い込まれるためです。

・運転資金の減少にともない、売上も減っていく
・借金の利息が増えて、債務が膨らんでいく
・優秀な社員が会社を辞めていく
上記のような状況に追い込まれると、もはや事業再生は不可能でしょう。したがって、事業再生では何よりも早めの行動を意識しなければなりません。

3ヶ月で事業再生を目指すとなると、例えば以下のようにスケジュールにはほとんど余裕がないはずです。

時期 やるべき行動
事業再生スタート~1ヶ月 ・専門家を探す
・リスケジュールに向けて動き出す

・経営改善計画を立てる

・会社の現状をチェックする など

1ヶ月~2ヶ月 ・各金融機関との交渉
・従業員のリストラ

・不採算事業の整理

・余計な在庫などの処分 など

2ヶ月~3ヶ月 ・メインとなる事業の整備
・資金調達手段の拡充

・進捗のチェック など

もちろん、会社によって各タイミングでやるべき行動は異なりますが、一般的なケースでは上記の例よりもさらに多くのことに取り組む必要があります。

「自分でスケジュールを立てる自信がない…」という方は、すぐにでも頼れる専門家を探して、スケジュール作成からサポートしてもらいましょう。

■事業再生のメリット・デメリットもチェックしておこう!

ここまで事業再生のコツをご紹介してきましたが、中には「破産」を検討している方もいることでしょう。では、この破産と比較した場合に、事業再生にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?

事業再生をするべきか否かの判断は、以下のメリット・デメリットを理解してから慎重に下すべきです。

メリット デメリット
・債権者に対し、ある程度のお金を返せる
・事業の社会的な価値を維持できる

・企業価値や信用性を維持できる

・債権者の理解と協力が必要になる
・身体的、精神的な負担が継続する

・再生に失敗すると、周りに多大な迷惑をかける

事業再生に成功すると会社や事業が存続するので、取引先などからの信用性はそこまで落ちません。また、従業員の生活を守ることにもつながりますし、債権者に対しても少しずつ返済ができるため、自社に関わるさまざまな人への負担を抑えられるでしょう。

しかし、事業再生は必ずしも成功するわけではなく、万が一失敗すると周りに多大な迷惑がかかります。その結果、次に新しいビジネスを思いついても、社会的な信用のなさから計画通りに起業が進まないかもしれません。

したがって、事業再生は事業に回復の見込みがある場合にのみ検討するべき手段と言えます。黒字化の可能性がないのにも関わらず行動を始めると、相談先や金融機関はもちろん、従業員や取引先、家族などに負担をかける恐れがあるので、事業再生をするべきか否かは慎重に判断するようにしましょう。

■まとめ

今回は事業再生について詳しく解説してきました。いかがでしたか?
事業再生は経営回復の手段となり得るものですが、失敗すると周りに多大な迷惑をかけてしまいます。そうなると次のビジネスにも響くので、今回解説したコツやメリット・デメリットを参考にしながら、慎重に行動を始めるようにしましょう。

■監修者
WizBiz株式会社
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