ひと昔前までは、「学生の本分は学業だ」などと言われ、学生時代に身につけた知識や経験を社会で活かすべきだとする考えが当たり前でしたが、近年は、学生のうちに起業して、早くから社会で活躍するといったケースが珍しくありません。

ビルゲイツやマークザッカーバーグといった世界に名を馳せる実業家も、ビジネスの出発点は学生起業であることからも分かる通り、欧米では昔から学生起業が盛んに行われる風土がありました。

一方、日本では長年にわたって「終身雇用制度」が社会全体の常識としてはびこっていたために、会社に入社して定年まで職務を全うすることが美徳とされ、学生の起業はハードルが高いだけでなく、奇異的な視線を向けられていたものです。

しかし、今ではインターネットの発展も手伝い、たとえ社会経験や実務経験が未熟であったとしても、事業を興すことは決して難しいことではなくなったほか、社会も寛容的となり、学生が「学生起業」を目指す傾向も徐々に高まりつつあるようです。

では、学生起業の方法や、それにあたってのメリットやデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

学生起業の方法

学生起業の方法

①起業のハードルは大きく下がった

多額の資本金をかき集め、事務所を借り、デスクを新調して従業員を雇い、名刺片手に企業から企業を渡り歩いて挨拶をして回る・・・。

起業に対して、このようなハードなイメージを抱く方も多いかと思いますが、はっきり言って、これは旧時代の起業です。

一方、現代では、パソコンとネット環境さえ整っているだけで、新たに事務所を構える必要はなく、自宅ですぐに事業を開始できますし、メールやSNSを活用すれば短時間で挨拶回りも完了させられます。

もちろん、事業の内容によっては取引先の開拓のために、積極的な挨拶回りが必要な場合もありますが、ネット上だけでそれらを完結できるビジネスモデルはいくつも存在しています。

また資本金に関しても、かつては株式会社であれば1000万円、合同会社であれば300万円と用意する必要がありましたが、現在の会社法では1円で株式会社でも合同会社でも設立が可能とされているため、会社設立にあたって資本金をかき集める必要もありません。

このように、起業のハードルは確実に下がっており、自己資金や時間に大きな制限がある学生であっても、起業は十分に可能であるといえるのです。

ビジネスコンテストへの参加やビジネススクールへの通学は必要か?

ビジネスコンテストへの参加やビジネススクールへの通学は必要か?

結論からいえば、「自身が事業としてやりたいこと」、つまりビジネスプランが定まっているようであれば、ビジネスコンテストの参加もビジネススクールへの通学も不要だといえます。

確かにビジネスコンテストに参加すれば、自身のビジネスモデルに対する客観的な評価を得られますし、仮に優勝を勝ち取るようなことになれば、様々な先輩起業家達からも大きな注目を浴びます。特典として事業資金が提供されるコンテストもあるでしょう。

また、ビジネススクールへ通学すれば、ビジネスに直結する知識や技術を身につけられるほか、他の学生とも切磋琢磨しながら成長を遂げられるものです。

ただ、ビジネスコンテストに参加しなくても、ビジネススクールに通学しなくても、起業は自由に行えます。

まずは起業に踏み切った上で、知識や技術に欠けると気づくようであれば、それからビジネススクールに通っても決して遅くはないのです。

学生起業のメリット

学生起業のメリット

①体力と時間に恵まれている 

「自宅ですぐに事業を開始できる」と前述したものの、フリーランスではなく会社の設立となれば、数多くの準備や手続きが必要となります。

また、事業の開始直後は思うように売り上げも上がらず、ジワジワと焦りが生じるものです。

しかし、学生のうちは体力もあるほか、夏休みや春休みといった長期休暇もあるため、じっくりとそれらに向き合う時間を用意できるものです。

②失敗しても将来に大きな影響を与えない

たとえ事業に失敗したとしても、まだまだ学生です。

これからの長い人生を考えれば、失敗も経験として将来に活かすことができますし、もしも就職を考えるのでれば、起業経験はストロングポイントとして、高い評価を受けられるはずです。

学生企業のデメリット

学生企業のデメリット

①資金調達が難しい

ビジネスモデルによっては、事業資金の調達が必要になりますが、まだ社会人経験がなく、経営者としての経験が浅い学生に対しては、銀行はもとより、ノンバンクのビジネスローンのさえも審査通過は難しくなります。

ただし、最近ではクラウドファンディングのように、ビジネスモデルが認められることによって返済が不要となる「出資」を受けられる金融サービスがありますので、事業資金の調達も決して不可能ではありません。

②経験や知識に欠ける

事業を開始すれば、取引先の開拓を進めることになるわけですが、担当者によっては、「学生は社会人経験や専門知識に欠ける」といった理由だけで、まともに取り合おうとしないなどというケースがよくあります。

どれだけ優れたアイデアを基にして周到なビジネスプランを用意できたとしても、まだまだ学生起業家を色眼鏡で見るビジネスマンは多数存在していますので、そういったケースに陥るようであれば、いさぎよく身を引いて、また新たに開拓を進めればよいでしょう。

まとめ

まとめ

インターネットをはじめ、様々な技術やサービスが発展した現在において、学生起業は難しいものではなくなっています。

もちろん学生起業家ならではのデメリットもありますが、仮に失敗したとしても、その経験を将来に活かせる余地は十分にあるのです。

「失敗を恐れず、とにかく前向きにチャレンジを重ねること」

それこそが学生起業における最大のメリットだといえるでしょう。