マイホームを購入された多くの方が、金融機関等を通じた住宅ローンをご利用されているかと思います。

「人生で最も高額な買い物」ともいわれるマイホームの購入ですが、どれだけ高額であろうとも、長い年月をかけてコツコツと一定の金額を支払っていくことで支払いを完了できる住宅ローンは、「人生を共にする良きパートナー」ともいえるサービスといえるのではないでしょうか。

しかし、住宅ローンに限らず、「ローン商品」全般には共通する大きなデメリットがあります。それが「金利」です。金利の設定によっては同じ金額の住宅でも、最終的な返済額に数百万円単位ほどの違いが生じることも考えられます。

また、現在も続くコロナ渦のような、予期せぬ異常事態が経済状況の悪化を招けば、月々の返済が家計に大きな打撃を与えることも起こり得るでしょう。

そこで考えたいのが、住宅ローンの見直しです。

近年では、2016年から日本銀行が進めるマイナス金利政策の恩恵を受けるべく、住宅ローンの見直しを図った上で、今よりも低い金利の住宅ローンへ借り換える人が増えているといわれます。

住宅ローンの借り換えは、現在利用している住宅ローンの借り入れ残高額を、金利の低い別の金融機関が提供する住宅ローンで借り入れて返済し、今度は新たに借り入れた住宅ローンを返済していくという仕組みが一般的です。

では、住宅ローンの借り換えをするとどのようなメリットやデメリットが生じると考えられるのでしょうか。

現在、住宅ローンをご利用中の人も、これから住宅ローンを利用してマイホーム購入しようと検討される人も、ぜひ参考にしてみてください。

固定金利と変動金利

固定金利と変動金利

すでに住宅ローンを利用中の方はご存知かと思いますが、まずは住宅ローンの2種類の金利タイプについておさらいしてみましょう。

・固定金利

固定金利はその名の通り、毎月の金利が一定に固定されているタイプなのですが、こちらは固定される期間によって2つの種類に分けられます。

ひとつは、全期間固定金利です。

全期間固定金利は、住宅ローンの返済が完了するまでの期間中にわたって金利が一定に固定され続けるタイプであるため、たとえ借り入れ期間中に金利の上昇が起きても慌てることなく、計画通りの返済を続けられるというメリットがあります。

ただし、他のタイプよりも金利が高く設定される傾向が高いため、金利の低下が長く継続されるようなことになれば、総返済額が他のタイプに比べて多くなってしまうケースも考えられます。

もうひとつは、当初固定金利です。

当初固定金利は、返済までの全期間にわたって金利が固定される固定金利に対し、「当初5年間○%」といったように、借入時に設定した期間中に限って金利を一定に固定できるタイプです。

生活設計や金融情勢の予測に合わせて固定金利期間の設定が可能になるほか、期間の終了後には固定金利か後述する変動金利を選択することができます。

しかし裏を返せば、固定金利期間終了後の毎月の返済額がはっきとしないため、仮に金利が上昇していれば毎月の返済額が急に増えるなど、生活に思わぬ打撃が与えられるケースが考えられるほか、生活設計が大きく狂ってしまう恐れも兼ね備えているといえます。

・変動金利

返済の全期間、または設定期間にわたって金利が固定される固定金利に対し、返済期間中に金利が上昇と下降したりする可能性のあるタイプが変動金利です。

金利の見直しが実施されるのは、金融機関に異なるものの、一般的には半年に一回

さらに、変更された金利が適用されるタイミングは「元利均等返済」の場合は5年ごと「元金均等返済」の場合は、金利変更と同時に返済額も変更されます。

変動金利は固定金利に比べて金利が低く設定される傾向があるほか、最近のように、マイナス金利政策の影響から金利が低水準で推移している状況においては大きなメリットを感じられるかもしれません。

しかし、現状の金利水準がいつまで続くのかは不透明です。そのため、金利の上昇が起きれば、たちまち返済額がプラスに転じてしまう恐れがあるなど、計画的な返済プランを立てにくいというデメリットがあります。

住宅ローン借り換えのメリットとデメリット

住宅ローン借り換えのメリットとデメリット

住宅ローンの各金利タイプのおさらいは以上です。

それぞれにメリットやデメリットがあることはお分かりいただけたかと思いますが、では住宅ローンの借り換えにあたってはどのようなメリットやデメリットが考えられるでしょうか。

メリット

・金利の低下は総返済額の減額につながる

冒頭でも書いた通り、住宅ローンの借り換えとは、現在の金利よりも低い金利の住宅ローンに乗り換えることです。

よって、当然ながら金利が下がれば支払い利息も額も下がり、最終的な総支払額の減額につながります。

また、返済期間を大幅に短縮するようなことをしなければ、毎月の返済額ももちろん減額されることになるため、情勢の悪化や収入の減額などの不足の事態で打撃を受けた生活設計の立て直しにも効果的だといえます。

・変動金利→固定金利への変更で金利上昇リスクの軽減

固定金利よりも金利が低く設定される傾向にある変動金利は、現状のような低金利水準の中では、返済額の減額にも効果的に働きます。

しかし、おそらく多くの方が住宅ローンの利用にあたっては30年近くの返済期間を設定しているかと思いますが、30年もの長い期間にわたって返済を続けていれば、いつ金利が上昇するか分からないものです。

そこで低金利水準となっている今こそ、変動金利から固定金利に乗り換えておけば、将来的に金利が上昇しても、現状の金利水準での返済を続けることが可能になります。

住宅ローンの借り換えは、確実な安定が見込めない金利変動リスクに対する備えにもつながるものです。

デメリット

・借り換え時には諸費用の支払いが必要

返済額の減額や金利変動リスクへの備えに効果的な住宅ローンの借り換えですが、もちろん無料ですべての手続きを完了できるわけはなく、契約に向けて様々な諸費用の支払いが必要になります。

たとえば抵当権の抹消登記費用や借り換え後の抵当権の設定費用、さらにはこれらの依頼先となる法の専門家への報酬

そして、金融機関への事務取扱い手数料のほか、場合によっては保証料といった費用の支払いも発生します。

報酬や手数料といった費用は、依頼先や金融機関によって設定基準が異なるため、住宅ローンの借り換えを検討するのであれば、金利だけでなく契約にあたって必要な費用の概算もしっかりと確認しておくべきだといえます。

・利用審査は必須

住宅ローンの新規契約時と同じように、借り換え時も金融機関による利用審査は実施されます。

そのため、いくら金利の低下によって返済額が抑えられる住宅ローンであっても、新規契約時よりも収入が落ち込んでいたり、他のローン商品を利用しているといった場合には、返済能力を疑問視され審査通過に影響を与えてしまうかもしれません。

さらに、住宅ローンの借り換え時には団体信用保険の乗り換えも必須となるため、もしも健康上に問題を抱えているなどすると、新たな団体信用保険の加入が難しくなることも考えられます。

したがって、新規契約時から経済状況や健康面がマイナスに転じているようであれば、希望通りの住宅ローンに乗り換えることは難しくなる可能性があることを覚えておかなければならないでしょう。