近年、経済産業省や2021年に設立されたばかりのデジタル庁などが中心となり、日常生活や企業活動のデジタル化が急速に推進されています。
しかし、時間も費用もかかることから、デジタル化の導入が遅れている、もしくは、デジタル化に対する理解不足から導入の予定すら考えていないという企業も少なくないのではないでしょうか。
そこで今回は、デジタル化とはどのような取り組みなのか。また、企業がデジタル化を進めることによって、どのようなメリットやデメリットが生じると考えられるのかについて解説します。
目次
デジタル化とは?
「デジタル化」と一言でいってもその取り組みは多岐にわたるのですが、大きく分けると2つの概念に分類することができます。
まずは、「アナログをデジタルに変換して業務の効率化とコスト削減を図る取り組み」です。
例えば、これまでは郵送やFAXで送っていた請求書や発注書といった書類をPDFに変換してメールで送信したり、クラウドサービスを活用して保存や共有するといった行いは、まさに「アナログをデジタルに変換して業務の効率化とコスト削減を図る取り組み」だといえます。
また、タイムカードを廃止して勤怠管理を外部サービスのシステムで行うことにより、出勤管理やシフト管理はもちろん給与計算の自動化や休暇の申請や承認といった、労務や人事業務の簡素化につながる取り組みなども、上記の概念に当てはまる分かりやすい一例です。
2つめは「デジタルテクノロジーの活用によって、ビジネスモデルを変革する取り組み」です。
金融業界を例に挙げるとすれば、申し込みから入金までの流れをすべてWeb上で完結できる、いわゆる「クラウドファクタリング」のほか、収集した会計記録などのデータを基にしてAIがプランの提示をしたり、与信審査の結果を判断する「オンライン融資」などは、デジタルテクノロジーの活用によって従来のサービスから大きな変革を遂げたビジネスモデルだといえます。
つまり企業にとっての「デジタル化」とは、単にアナログをデジタルに変換する取り組みによって業務の効率化やコスト削減を図るだけでなく、デジタルテクノロジーを活用することにより、消費者の利便性の向上や新たな価値の創造に向けた取り組みでもあるわけです。
デジタル化のメリットとデメリット
では、企業がデジタル化を進めるとどのようなメリットやデメリットが生じると考えられるのでしょうか。
デジタル化のメリット
・文書管理の効率化と簡略化につながる
契約書や請求書、納品書に発注主などの各種書類や業務で使用する資料といった紙の文書を、膨大な数のファイルに保存して管理しているという企業もまだまだたくさん存在するようです。
しかし、それらの書類や資料の確認が必要になった場合、探すのに時間を割かなければならなかったり、ファイルの保存に必要なスペースを確保するために、不要になった文書の処分に人員を動員しなければならなかったりと、紙の文書管理はとても効率的とはいえないものです。
一方、文書をPDFに変換するなどペーパーレス化してネットワーク上で管理できれば、物理的な場所の確保が不要になるほか、検索機能を使って瞬時に見つけ出すことも可能になります。
企業のデジタル化において、最も取り組みやすいといえる文書のデジタル化は、その管理の効率化と簡略化に非常に効果的です。
・テレワークの実施につながる
新型コロナウイルスの感染症拡大をきっかけに、テレワークの導入が推進されるようになりましたが、都市部の企業を除けば導入が大きく遅れているようです。
普及が進まない一番の理由は、やはりデジタル化の遅れ。
特に地方の企業の多くは、未だに「紙文化」や「印鑑文化」が根強く残っているほか、デジタルテクノロジーに関する知識の不足から、テレワークには必須ともいえる「バーチャルプライベートネットワーク(VPN)」や「クラウドサービス」の導入が進んでいない傾向にあります。
上述した「文書のデジタル化」に加え、それらを管理するネットワークやサーバーの整備を進めるなど、業務に関するデータをいつでもどこでも確認・共有できるような環境を整えるだけでも、テレワークの実施に大きく前進することができます。
・生産性の向上や人手不足の解消
企業活動にデジタルテクノロジーを導入すれば、業務の効率化につながる。つまり、アナログによる業務や作業に割かれていた時間や人員を削減できるため、生産性の向上を図れるようになります。
また、これまではマンパワーで行なってきた作業を自動化することにより、従業員の業務範囲の拡大や残業時間の削減、さらには人手不足に陥るような事態が生じても、事業活動の縮小や中断といった心配が解消されるはずです。
・革新的なサービスや商品の開発につながる
企業における「デジタル化」には、「アナログをデジタルに変換すること」のほかに、「デジタルテクノロジーの活用によって、ビジネスモデルを変革する取り組み」でもあることを解説しました。
「デジタルへの変換」と比較すれば、少しハードルは高くなりますが、デジタルテクノロジーを導入して効果的に活用できれば、市場での差別化を図る上では欠かせない「革新的なサービスや商品」の開発につなげることも可能になるでしょう。
デジタル化のデメリット
・セキュリティ面の不安
デジタル化における最大のデメリットは、やはりセキュリティ面の不安です。
書類や資料などのデータをネットワーク上で管理・共有できることから、業務の効率化や簡略化に繋がる一方、ネットワーク上で管理される以上、いくら厳重かつ万全なセキュリティ対策を施していても、不正侵入による情報漏洩やウイルス感染によるデータ抹消といった恐れは常につきまとうことになります。
特に顧客情報などの機密情報の漏洩は、社会的な信用の失墜とともに、企業の存続に関わる事態でもあります。デジタル化の導入を進める上では、従業員のセキュリティ意識向上を促す教育のほか、情報セキュリティツールのアップデートを怠らないといった対策を入念に行う必要があります。
・導入費用の確保が必要
デジタル化にあたっては、ネットワーク環境の整備やシステムの導入のほか、必要によっては新たにデバイスやソフトを購入しなければなりません。
また、デジタルに関する知識を要した従業員がいない場合、外部から人員を招致する必要もあるでしょう。
ケースや金額は様々ですが、デジタル化にあたっては導入費用の捻出も必須となります。
ただ、最近では「IT導入補助金」をはじめとした、デジタル化を推進するための補助金や助成金も充実しているため、それらの制度を積極的に活用すれば費用の確保はそう難しくはないといえます。
まとめ
今回はデジタル化の概念や、デジタルテクノロジーの導入によって生じると考えられるメリットやデメリットを解説しました。
企業におけるデジタル化は、いくつかのデメリットもある一方で、業務の効率化やコスト削減のほか、新たな商品やサービスの開発にもつながるなど、経営や事業の可能性を大きく拡げる取り組みだといえます。
デジタル化のメリットを最大限に得るためにも、経営や事業の「目的」や「目標」を改めて社内で確認し、それらの達成に直結する設備やサービスの導入が必要であるといえるでしょう。