経営者である以上、会社の倒産は絶対に阻止せねばなりません、言うなれば、会社の存続は経営者に与えられた至上命令であり、それを達成するために社員教育を徹底し、投資と回収の繰り返しに徹しているということがいえます。
しかし、思うように事業が伸び悩み、利益の停滞・低迷が続き、キャッシュフローが乱れるといったような事態に陥った際、経営者の中には事業の限界を感じたり、社員の努力不足を問題視するといった短絡的な要因の断定だけで片付けようとする人がいます。
確かに、市場の変化に伴った事業の限界や社員の努力不足も一因であることは考えられます。
事業や社員教育の見直しを徹底することにより、短期で経営のピンチから脱出できるケースはもちろんあるでしょう。
しかし、それでも改善がみられない場合、それはそもそも「企業の質」が大きく低下していることが要因になっているのかもしれません。
企業の質とは、売上や利益、社員数といった“規模”を表すものとは異なり、企業としてのブランド力や信頼度といった“本質”の部分だといえます。
したがって、企業の質が低下すれば、どれだけ需要が高く魅力的な事業を展開しようとも、社外からの評価は落ち、結果として売上や利益の低下を招くことにもつながるわけです。
裏を返せば、たとえ規模が小さくても高い利益を上げている企業は、企業の質が高いという場合も多くみられます。
では、企業の質を向上させるためには、どうすれば良いのでしょうか。それには、現状と将来に視点を置いた「持続的成長」を意識した経営が不可欠になります。
ここからは、持続的成長を続けるために必要だと考えられる施策について解説していきたいと思います。
時代を先取りした事業の展開
まずは、将来的な経営の持続を果たすため、時代を先取りした事業の展開を前ざすことです。
常に目まぐるしく変化を続ける市場や顧客のニーズに応え続けるには、その変化をどれだけ迅速にキャッチできるかにかかっているのは確かです。
また、ニーズをいち早くキャッチして時代を先取った事業の展開を実現させるには、企業が組織としての変革力を強化した上で、自社の強みを活かし、いかに競合他社との差別化を図れるかが重要な鍵となります。
月次決算の導入と決算データの効果的な活用
法的義務のある年次決算は実施しているものの、法的義務のない月次決算は実施していないという企業が少なからず存在します。
社員数の少ない企業にとっては、毎月の業務負担が増加することもあって気軽に実施できるものではないかと思いますが、月次決算を導入できれば、持続的な成長に役立つ情報を短いスパンで得続けることが可能になります。
たとえば、予算修正を検討する場合、年次決算に基づいて実施するのであれば、1年に一度算出されるデータを待つ必要がありますが、月次決算を実施することができれば、一ヶ月ごとの細かな予算修正が可能になります。
また、営業利益率や売上増加率といった経営指標を随時確認できることで、経営状況をこまめに確認しながらの戦略立案を行うことができます。
財務会計管理は経営の方向を決定づけるための重要な情報です。
つまり、ひと月ごとにそれらを得られる月次決算の導入は、持続的な成長を目指す上では必要不可欠な施策ともいえるというわけです。
結果だけでなくプロセスを含めた人事評価
どのような事業であっても、顧客との契約に結びつかなければ売上を上げることはできません。
したがって、おそらく多くの企業は社員に対する評価を「結果がすべて」だと定めていることでしょう。
しかし、結果に至るまでには必ずプロセスが存在します。
また、結果に至らなくてもプロセスは存在するものです。
それにも関わらず、結果のみが評価対象となり、プロセスに対する評価はないがしろにされれば、それは業務に対する総合的な評価に欠けているということになるわけです。
わかりやすい例を挙げれば、営業担当者にとっての結果は顧客との契約。
一方のプロセスは、資料の作成や商談などになりますが、結果のみに対して評価されるのであれば、どれだけ優秀な資料を作成しようとも、契約を得られないとプロセスに対する評価はされないということになってしまいます。
このような評価の仕方では、社員のモチベーションは停滞や低下に陥り、結果として企業としての成長を妨げる要因を招きかねません。
経営の原動力ともいえる社員のモチベーションの向上は、自社の企業力を高めるのはもちろん、社外からの評価にもつながります。
そのためにも、結果だけに取られることなく、プロセスも含めた総合的な人事評価を心がけてみてください。
まとめ
今回は、企業にとっての「持続的成長」の必要性と、そのための施策をいくつかご紹介しました。
企業の大きな目標は「利益の向上」にありますが、そのためには短期的な投資と回収だけに意識を向けるだけなく、企業の質の向上を図るための持続的な成長を意識した経営が不可欠になります。
今回ご紹介した施策はどれも難しく複雑なものではありませんので、まずは自社の現状を把握した上で必要性に応じた施策を実行してみてはいかがでしょうか。