ビジネスローンの審査ポイントとはなにか?
ビジネスローンではどんな審査をして、なにをポイントとして重視するのか?
これらは、ビジネスローンを利用した借入を検討する経営者なら、おそらく大部分の人が感じる疑問でしょう?そこで今回は「ビジネスローンの審査基準とは?」をテーマに、事業資金融資を審査している銀行員の私が解説したいと思います。ビジネスローン審査のポイントを、現場で融資の審査をする銀行員がわかりやすく解説しますので、自社の資金調達に役立てるよう、参考にしてください。
ビジネスローン審査のポイントとは?〜1.ビジネスローンのおさらい
まず、ビジネスローンについて基本から知識をブラッシュアップしましょう。
ビジネスローンとは
法人や個人事業主が事業資金調達に利用できるのがビジネスローンで、銀行とノンバンクで扱っています。「ビジネスローン」でまずイメージするのは「簡単・スピーディー・でも金利が高い」といったあたりではないでしょうか?その他、ビジネスローンの特徴をまとめてみました。
ビジネスローンのおさらい
では、ビジネスローンの基本知識ブラッシュアップのため、箇条書き形式でまとめてみました。
<ビジネスローンのおさらい>
● ビジネスローンは事業資金融資の一種
● 銀行系、ノンバンク系でそれぞれ取り扱っている
● 審査は数時間〜即日に結果がわかるのがウリ
● 融資利用もスピーディー 即日融資OKのケースもある
● 資金使途は事業資金(ノンバンクなど一部では使いみち自由の場合も)
● 原則・保証人不要(法人は代表者が保証人になるケースも)
● 原則・担保不要(融資額や業況などで必要な場合も)
● 金利は事業資金融資より高い傾向
● カードローンや証書貸付などの契約形態
ビジネスローン審査のポイントとは?〜2.ビジネスローンの審査ポイント
ではここから、ビジネスローン審査のポイントを一つずつ解説していきます。
<ビジネスローンの審査ポイント>
1. 必要書類
2. 会社の所在
3. 「反社」のチェック
4. 取引停止処分
5. 信用情報
6. 業歴
7. 税金の滞納
8. 返済財源
9. 返済能力
10. 事業計画
ビジネスローンの審査ポイント1.必要書類
ビジネスローン審査では、申込みや審査に必要な書類をしっかりそろえて提出することが、ポイントの一つです。
<ビジネスローンの必要書類>(申込時か、契約までに必要かなどはケースにより異なる)
本人確認書類
個人(法人代表者)の運転免許やパスポートなど、原則として写真入りの確認書類
決算書類
法人:決算書(1期〜3期程度) 個人:確定申告書(1年〜3年程度)
納税証明書、所得証明書などの公的証明書が必要な場合も
契約時の書類
法人:商業登記簿謄本 個人:印鑑証明書や住民票
ビジネスローンの審査ポイント2.会社の所在
一般に会社の所在は「しっかりしている」のが前提になります。これはつまり、許認可や各種の届出などでは、会社所在地や登記上の住所が特定され、ホームページなどで公表されているのが普通だからです。そうした点から、マンションの一部屋や賃貸している事務所だと信頼度が低い、などとも言われています。
もちろん、マンションの一室だと疑われやすいということではありませんがペーパーカンパニーなど実態のない会社が、こうした賃貸物件にあることが多いという事実もありますので、会社の所在には注意を払うべきでしょう。たとえばこれから会社を作る場合で、接客や店舗を必要としないなら、賃貸物件よりも自宅を会社所在にしたほうが好印象となる場合もあります。
ビジネスローンの審査ポイント3.「反社」のチェック
銀行などの金融機関、そして消費者金融などノンバンクはともに、反社会的勢力とはビジネスローンを含む事業資金融資、個人向けカードローンなどすべての融資取引をしません。また預金取引をはじめとして一切取引を拒絶することを「反社会的勢力に対する基本方針」などの名目で公式サイトなどに公表しています。そのため、反社会的勢力に該当しないか?とチェックするのがビジネスローン審査における大きなポイントのひとつです。
実際には、ビジネスローンの審査で銀行やノンバンクがそれぞれ独自に開発した、ビジネスローン申込者(個人・会社)が反社会的勢力かどうかチェックする(これが「反社会的勢力のチェック」略して「反社チェック」)システムなどで確認するとともに、暴力追放運動推進センターや警察のデータベースとも連携してチェックをします。
反社会的勢力と定義されるのは、①文字通り反社会的勢力に該当する人・会社②反社会的勢力と見なされるような行為をした人・会社の両方です。
<反社会的勢力に該当する人・会社>
「暴力団等」として以下が、いわゆる反社会的勢力と定義されている
暴力団、暴力団員(暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者も含む)、準構成員、関係企業
総会屋、社会運動等を標ぼうした違法集団(俗に「〇〇ゴロ」などと呼ばれる)
特殊知能暴力集団等(いわゆる「ハッカー集団」)、
暴力団等との関係性でも反社会的勢力に該当するケースがある
暴力団員等が経営を支配している
暴力団員等が経営に実質的に関与している
自己(自社)や第三者から依頼を受け、不正に利益を図る目的や第三者に損害を加える目的などで、不当に暴力団員等を利用している
暴力団に対し資金提供、または便宜供与をしている
本人(会社なら代表、役員)が暴力団と社会的に非難される関係を有する
<反社会的勢力と見なされるような行為>
暴力的(直接的な暴力以外に脅迫行為やビラなども含む)な要求行為
法的に不当な要求行為
取引において脅迫的な言動や暴力を用いる
風説の流布などによる妨害(偽計業務妨害)行為
ちなみに犯罪行為も反社会的勢力とみなされてしまう場合があります。意図的か、そうでないかに関わらず犯罪歴があると、ビジネスローンで審査落ちになる可能性もあります。しかしそのいっぽうで、申込者が反社会的勢力だと判断して融資を断わる場合にも「反社会的勢力なので融資しません」などと説明するようなことは無く、「総合的に判断した結果、融資はお断りします」と言われるだけです。
ビジネスローンの審査ポイント4.取引停止処分
取引停止処分とは、手形や小切手を不渡り(支払期日に決済できない=残高不足で支払いできないこと)を、6カ月以内に2度発生させた場合、金融機関と2年間取引や貸出取引ができなくなる処分のことです。預金や融資の取引ができないので、実質的に取引停止処分となれば会社は倒産となります。
不渡や取引停止処分を受けた場合、記録としてデータベースには
氏名(会社名・屋号も含む)、会社なら代表者名
個人は生年月日、会社は設立年月日
住所(会社の場合は登記された会社所在地)
業種
取引銀行と支店名
金融機関などでは銀行取引停止処分の情報が蓄積されています。そのため、たとえば会社所在地が同じだと、名前を変えただけで前の会社と同じ(実際によくあるケース)ではないか?などとチェックを受けます。
また個人では、住民票の住所は免許証の住所と同一なのが普通なので、たとえばビジネスローン申込書類として免許証と住民票住所が違っていると、会社と同様の理由で疑われる可能性もあります。
ビジネスローンの審査ポイント5.信用情報
信用情報は一般に「個人信用情報」として、個人の借金やクレジット支払履歴、そして返済が延滞した、あるいは自己破産したなどのネガティブ情報(「異動」、いわゆるブラックリストの状態)が登録されています。法人の記録はありませんが、代表者の信用情報はチェックされるので無関係ではありません。
個人信用情報は、それを扱う信用情報機関(CIC・JICC・KSC)があり、基本的には以下の情報が記録保管されています。
<個人信用情報>
利用情報:ローンなどの基本契約内容、支払状況など(異動はここに)
申込情報:金融機関やカード会社へ新規申込した内容
照会履歴:カード会社などが契約更新で信用情報を照会(調査)した履歴
ビジネスローンの審査ポイント6.業歴
事業をどのくらい継続しているのかという点は、要は会社が倒産せずに生き残ってきたから、破綻(デフォルト)の危険性も高くないといった判断基準につながります。業歴が長い会社が良い会社、短いから審査落ちというわけではありませんが、業歴は長いに越したことは無いのは、言うまでもありません。
ビジネスローンの審査ポイント7.税金の滞納
税金の滞納があると、審査に通過するのは難しくなります。なぜかというと、税金の滞納があると、最悪の事態では会社や事業資産を差し押さえられることもあるからです。そうなると融資の返済は難しくなるので、通常ビジネスローンや融資の申込書類では「私は税金の滞納がありません」と自己申告する形式になっているものもあるくらいです。
また納税は国民として最低限・最重要な義務であり、その義務も守れない相手では融資をするのにふさわしくないといった判断基準もあり、いずれにしても滞納税金があると審査落ちしてしまう可能性は高くなります。
ビジネスローンの審査ポイント8.返済財源
返済財源とは、文字通り借りたお金を返済するお金の財源のことです。返済に充当する「資金の源(みなもと)」という点から「返済原資」とも呼ばれます。
返済財源としては、たとえば運転資金の借入なら売上で返済するのが普通ですし、設備資金なら収益(利益のこと)で返済するのが大原則です。
審査の過程で問い合わせがあった時には、返済財源を明確に答える必要があります。
「今回借りたのは商品仕入資金で、3ヶ月のあいだで回収した売上で返す」
「車両を買ったので、利益から返済していく」
このように運転資金は売上で、設備資金は利益で返済すると応えられるようになっている必要があります。もっともビジネスローンでは返済財源について質問されることは多くないので、そういった意味では参考程度に考えてもいいのですが、これも視点を変えてみれば、返済財源まで聞いてくるということは審査が難航している可能性もあるので、回答は慎重にするよう注意が必要です。
ビジネスローンの審査ポイント9.返済能力
運転資金は売上で返済するのですが、設備資金や、借入が大きい金額になると、返済能力も審査のポイントとなります。上記したように設備資金の返済財源は利益なのですが、その利益から企業が「借りたお金を、利益を使って何年で完済できるか?」というのが返済能力を見るときの考え方で、これを「償還力(償還年数)」という式で導き出し、審査のポイントになります。
<償還力の計算式>
(返済中の借入金)+(今回の融資) =返済能力(年)
(減価償却費)+(利益)
ビジネスローンの審査ポイント10. 事業計画
ビジネスローンでは事業計画(今後、事業をどうやってオペレーションしていくのか?といった計画で5年などの期間で目標を設定し、目標達成のため具体的な施策などの計画)が審査のポイントになります。事業計画では以下のような点を盛り込んであることが重視されます。
<ビジネスローン審査でポイントとなる事業計画>
1. 経営理念
経営理念(ビジョン)といったものが盛り込まれていないと、事業計画書は不十分例「社会の発展に寄与したい」「我が社の事業は世の中を便利にします」など
2. 強み
取扱商品や提供するサービスなど「他にはない自社の強み」のアピールが必要
「わが社はすごい」より「他社と比べ、わが社はここが優れている」といった比較的な表現が理想
我が社はすごいという抽象的な表現より、ほかよりもここがすごいといったように客観的・具体的な表現が、事業計画では必須
3. 経験
経営者の資質も重要で、経験や人脈といった点がアピールポイントになる
もちろん経験が浅い人もいるが、そういった場合は経験不足を知識やアイディアなどで補完している説明が求められる
4. 市場・競合相手の分析
自社の業界や、マーケットで競合する他社との差を分析することが必須
事業計画でこうして分析を見える化することで、審査にプラス作用が期待できる
5. 実現可能な計画
事業計画が実現可能なものであることが大前提
バラ色の予想、売上が右肩上がりの計画などを作っても、実現できなければ「絵に書いた餅」
そのため、現実的な論調で計画を書き進める姿勢が必要になってくる
ビジネスローン審査のポイントとは?~まとめ
今回は、ビジネスローン審査のポイントについて解説してきました。ビジネスローン審査のポイントを知り、スムーズな申し込みと審査通過を目指し、自社の効率的な資金調達に役立ててください。
この記事が参考になれば幸いです。