突然ですが、皆さまの会社では定期的に「断捨離」を行っていますか?

一般的に、「断捨離」とは不要な物を捨て、身の回りを整理することで生活の質を高めていく考え方を指しますが、最近では、自宅などのプライベート空間だけでなく、オフィスにも取り入れようとする動きが活発化しているように感じます。
働き方が多様化し、リモートワークやフリーアドレス制を導入する企業が増えた今、オフィス環境を見直す重要性はこれまで以上に高まっているといえるでしょう。

実際に、名だたる大企業や成長著しいベンチャー企業の中には、定期的な断捨離を通じて無駄な物を減らし、必要な情報やツールだけを残すことで、快適で機能的なオフィス環境を実現しているケースも多く見られます。こうした企業では、限られたスペースを有効活用し、従業員一人ひとりが集中しやすい環境づくりを意識的に行っています。

一方で、デスクに大量の書類や古い資料が積み重ねられていたり、床に使われなくなった機器やダンボールが置かれているオフィスも、今なお少なくありません。「後で確認するから」「いつか使うかもしれないから」といった理由で捨てられず、そのままになっている物が増え続けてしまうのは、多くの職場でよく見られる光景です。

しかし、このような光景を放置していると、来客からの印象は良くないものですし、目に入るたびに気分が滅入ってモチベーションが下がるという従業員もいることでしょう。整理されていない空間は、無意識のうちに人の集中力を奪い、ストレスの原因にもなります。

そして何よりも、そういった物が溢れるオフィス空間によって業務の効率性や生産性を下げている可能性も考えられるのです。必要な情報を探すのに時間がかかったり、作業スペースが狭くなったりすることで、本来集中すべき業務に余計な負担がかかってしまいます。

逆にいえば、断捨離を計画的に行い、不要な物を捨てて整理されたオフィス環境を整えることで、スペースに余裕が生まれ、従業員同士の動線もスムーズになります。その結果、働く人にとっても来訪者にとっても心地よい空間が実現し、組織全体のパフォーマンス向上につながることが期待できるでしょう。最近では、オフィス整理を専門としたサービスを活用する企業も増えており、第三者の視点を取り入れることで、より客観的かつ効果的な断捨離を進めることも可能です。

そこで今回は、オフィスで断捨離を検討する際におさえておきたいポイントについて解説していきたいと思います。今後の働き方や組織の成長を見据えた、実践的な断捨離の考え方を理解し、より良いオフィス環境づくりに役立てていただければ幸いです。

「保管」と「廃棄」の基準を明確にする

「保管」と「廃棄」の基準を明確にする

まずは書類の断捨離から考えてみましょう。

最近では、書類をPDF化してネットワーク上で保管・管理するペーパーレス化を導入する企業も増加していますが、業務や取引先の方針などによって、その導入が難しいという企業も多いはずです。

全書類をペーパーレス化できれば、それだけでオフィス空間もシンプル化できるものですが、どうしても紙としての保存が必要な場合には、「保管」するものと「破棄」するものの基準を明確にしておくと良いかと思います。

たとえば「期限」

おそらくすべての企業が、請求書や納品書といった証憑書類は法律で定められた期間は保管しているものと思われますが、その期限を過ぎても「もしもの時」のためにと保管を続けられるケースがよくみられます。

重要書類であるため、そもそも破棄すること自体をためらわれるのも無理はありませんが、放置しておけば取引を重ねるたびに数は増していき、ますますオフィスを圧迫する要因にもなりかねません。

ですので、たとえ重要書類だとしても保管期限を過ぎたものは顧問弁護士や税理士等に相談しながら、思い切って廃棄するべきだといえます。

また、法律で定められていない書類、たとえば業務で使用した資料やメモなどに関しても期限を定めて廃棄するようにしましょう。

これらに対しても、「別の案件で役立つかも」などという考えが芽生え、ついつい廃棄をためらってしまうものですが、個人的に用意や作成した資料やメモならば、自宅に持ち帰って保管しておいたり、スマホのカメラで撮影してPDF化するなどの手段をとれば、オフィスのデスク上はすっきりと片付けられます。

「保管」すると決めた書類は使用頻度ごとに分類

「保管」すると決めた書類は使用頻度ごとに分類

そうは言っても、様々な事情や理由によって紙で保管しておきたい書類もあることでしょう。

そのような場合には、使用頻度ごとに分類しておくことをおすすめします。

たとえば、「毎日確認する」「週に1回確認する」「半年に1回確認する」などのように、使用や確認の頻度を考えて分類し、頻度の高い書類だけを手元に置いておくようにすれば、書類の整理につながるだけでなく、必要に応じて取り出しやすくもなるため、業務の効率化にも期待できます。

とにかく、オフィス空間やデスク上を圧迫しがちな書類をしっかりと断捨離するだけでも、気持ちよく業務を進められるようになるものですので、時間を見つけてぜひ取り組んでみてください。

一度不要になった物を再度使うことはほぼない

一度不要になった物を再度使うことはほぼない

では、書類以外のものについてはどうでしょうか。

特によくみかけるのが、故障や買い替えによって使用されなくなったPCモニターやデスクトップ、小型のプリンターなどの機器類が床に放置されている光景です。

中でも、たっぷりと埃をかぶったものを見かけると、「長い期間にわたって放置されているのだろう」と推測できます。

おそらく、放置している理由としては、「修理をしてまた使用するつもり」であったり、「廃棄するにあたって費用が発生する」「保存データの漏洩が心配」などが挙げられるかと思いますが、ひとつ確かなのは、「一度、使用しなくなった物を再度使うことはほぼない」ということです。

もちろん、日々の業務に追われる中で処分の時間を取れないなどの理由もあるかと思いますが、使用しない物の放置を続けていると、ますますその数は増えていくだけでしょう。

ですので、不用品処分の担当者を決めておくなどして素早く対応できるよう準備しておき、不要と判断した物は早急に片付けていくべきかと思います。

前述したように、廃棄にあたって費用が発生する機器類は多々ありますが、リサイクルショップや中古品の回収業者の中には、たとえ故障して使用できない機器であっても、ジャンク品として引き取ってくれるところもあります。

そういった業者をうまく活用することによる断捨離は、手間をかけることもなくスムーズに進められますので、ぜひ検討してみてください。

オフィス断捨離は「捨てる」ではなく「環境を構築する」ための基本施策

ここまで、オフィスで断捨離を行う際におさえておきたい考え方や具体的な手順について紹介してきました。断捨離というと、「モノを捨てる作業」「整理整頓を徹底すること」といったイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし本当に大切なのは、単に不要なモノを減らすことではなく、自分たちの職場環境を見直し、快適で成果につながる状態を実現することにあります。

特に2024年から2025年にかけて、働き方の多様化や転職の増加、個人の価値観の変化などを背景に、職場環境への意識はこれまで以上に高まっています。東京をはじめとする都市部では、オフィスのスペース効率や、社員のストレス解消、人間関係への影響といった点も重視されるようになりました。その中で、断捨離は「気合い」や「一時的なイベント」ではなく、継続的に行うべき基本施策として位置付ける必要があります。

まず理解しておきたいのは、「いらないモノ」と「必要なモノ」の違いを正しく説明できる状態をつくることです。何となく持っている書類や使っていない商品、引き出しの奥に眠る備品などは、探す時間や管理の手間といった無駄を生み出します。こうした無駄は、1分、5分といった小さな時間の積み重ねで、業務全体の効率や社員の集中力を大きく下げてしまう原因になります。

そのため、断捨離を行う前には「どこに・何が・どの分だけあるのか」を把握する作業が欠かせません。モノの一覧やリストを作成し、使用頻度や保管理由を整理することで、本当に必要なモノが見えてきます。この「見える化」は、断捨離のコツであると同時に、思考を整理する術でもあります。私自身、多くの職場や個人の事例を見てきましたが、成果が出ている組織ほど、断捨離の手順がマニュアル化され、誰が見ても分かる状態になっています。

また、断捨離は個人だけで完結させるものではありません。社員全員を対象に行い、考え方や判断基準をシェアすることが重要です。「自分にとっては不要でも、他の人には必要」というケースもあるため、独断で捨てるのではなく、事前に確認する点や注意点を共有しておく必要があります。このプロセスを丁寧に行うことで、無用なトラブルや人間関係のストレスを防ぐ効果も期待できます。

さらに、断捨離の効果は物理的な整理整頓にとどまりません。モノが減り、職場がすっきりすると、心にも余裕が生まれます。視界に入る情報が整理されることで集中力が高まり、新しいアイデアや改善案が生まれやすくなるのです。これは多くの書籍や本、専門家が提唱している点でもあり、実践者の声からも共通して語られています。

最近では、無料で使えるチェックリストや解説ページ、断捨離を支援するサービスやサイトも増えており、初心者でも取り組みやすい環境が整っています。プロに依頼する選択肢もありますが、まずは自分たちでできる範囲から始め、効果を実感しながら次のステップへ進むのがおすすめです。大切なのは、一度きりで終わらせず、「前より良くなったか」「新しい無駄が生まれていないか」を定期的に見直すことです。

断捨離は、家の中だけで行うものではありません。職場という多くの人が長い時間を過ごす場所だからこそ、環境を整える力が、そのまま組織の力につながります。モノを減らし、情報を整理し、使い方を見直すことで、快適で生産的な職場を構築することは十分に可能です。

次のステップとしては、「5つの観点から断捨離をチェックする」「定期的な見直し日を設定する」など、仕組みとして定着させることを意識してみてください。断捨離は特別な人だけのものではなく、誰でも実践できる基本的な取り組みです。無駄を手放し、新しい価値を生み出す環境づくりを、ぜひ今日から行ってみてください。