「あの経営者さんは、また違う車に乗っている」

皆さんの周りにも、毎年のように車を乗り換えている経営者仲間はいませんか?

実はこれ、その経営者さんの性格が単に「飽きやすい」だとか「移り気が激しい」、はたまた事業が大成功し「猛烈に稼いでいる」といった理由だけではないことが多いのです。

法人や経営者が社用車にする目的で車を購入すると、購入費を経費として計上できることは多くの方がご存知かと思います。

それは、新車でも中古車でも同じこと。税金対策として車を購入されるケースは決して珍しいことではありません。

では、新車と中古車どちらを購入したほうが税金を抑えられるのでしょうか。 一般的には、新車や中古車を問わず、金額が高いものの方がより経費をあげられると考えることでしょう。

正解は金額にかかわらず中古車であること。それも4年落ちの中古車を購入するのが最も税金対策として効果的だといわれています。つまり同じ500万円の車でも、新車より4年落ちの中古車を購入した方が税金を抑えられるというわけです。

次に、車の乗り換え率が高い経営者仲間に聞いてみてください。意外と中古車に乗っている率が高いことに気づかれるはずです。

それでは、なぜ4年落ちの中古車に乗ると節税効果が高くなるのでしょうか。

その答えを解く鍵は「減価償却」にあります。

減価償却とは?

はじめに減価償却について簡単に確認しておきましょう。

減価償却とは、経費で購入した設備や備品などの固定資産を、法律上で規定された耐用年数に応じて分割計上する計算方法です。

さらに減価償却の計算方法には、「定額法」と「定率法」という2種類があります。

定額法とは、毎年同額の償却費を計上していく方法。一方の定率法は、耐用年数に応じて、償却額が年々減少していく方法です。

●定額法の計算式

取得金額×定額法の償却率

●定率法の計算式

未焼却残高×定率法の償却率

ちなみに定率法を用いたい場合は、変更を希望する年の3月15日までに税務署へ届けでなければなりません。

4年落ちの中古車を購入した方が高い節税効果につながる理由は、これら2種類の方法を比較して考えるとひも解くことができます。

減価償却イメージ

 

新車と4年落ち中古車の償却額を比較

それでは普通自動車の600万円の新車と、4年落ちの中古で同額の普通自動車を購入した場合の初年度における償却費を比較してみましょう。

●新車で600万円の普通自動車の場合

普通自動車の新車の場合、法定耐用年数は6年と定められており、定額法の焼却率は0.167%、定率法の焼却率は0.333%です。

これを定額法で計算すると、

6,000,000×0.167=1,002,000

一方、定率法で計算すると、

6,000,000×0.333=1,998,000

600万円の普通自動車の新車を購入すると、初年度の償却額は定額法だと1,002,000円、定率法だと199,8000円となります。

●4年落ちの中古で同じく600万円の普通自動車の場合

普通自動車の中古の場合、4年落ちだと法定耐用年数は2年、定額法の焼却率は0.500%、定率法の償却率は1.000%です。

定額法

6,000,000×0.500=3,000,000

定率法

6,000,000×1.000=6,000,000

600万円の普通自動車の4年落ち中古車を購入すると、初年度の償却額は定額法だと3,000,000円、定率法だと6,000,000円となります。

すでにお分かりいただけているかと思いますが、同じ600万円の普通自動車を購入した場合、新車よりも4年落ちの中古車のほうが1年に計上できる償却額が多いということになります。

それどころか、定率法による計算であれば購入額のすべてを購入初年度に経費計上できてしまうというわけです。

これが新車よりも4年落ちの中古車の方が、節税効果が高いといわれる理由なのです。

減価償却注意点

留意するべきいくつかの注意点

4年落ち中古車を購入すると、購入費の全額を経費として計上できるため、高い節税効果が期待できます。

ただし、その一方でいくつか留意しておく必要のある事項がありますので、あわせて紹介していきます。

●購入初年度の全額経費計上は、一括購入に限られる

定率法を用いて購入初年度に全額経費計上するためには、4年落ちの中古車を一括払いで購入する必要があります。

その理由は、ローンで購入した場合、元本は借入金として計上されることになり、減価償却費として計上できるのは利息のみだからです。

つまりローンで4年落ちの中古車を買っても、購入初年度に全額を経費計上することはできないということになります。

●全額経費計上するなら決算期の翌月の購入を

最初に説明した通り、減価償却費は月割りで算出します。

したがって、購入初年度に全額を経費計上したいのであれば、決算月の翌月までに一括払いで購入しておかなければなりません。

まとめ

まとめ

今回は、4年落ちの中古車購入が、なぜ高い節税効果を生み出すのかについて解説しました。

4年落ちの中古車は、減価償却における定率法を用いることで、全額を購入初年度に経費計上できるようになります。

ただしそのためには、決算月の翌月に一括で購入するという条件を満たす必要があることを覚えておきましょう。

また、事業や経営の状況によっては、経費として年数をかけて計上してきたいという方針に至ることもあるでしょう。

そのような場合は、無理をせず減価償却していけば良いかと思います。

社用車として車を購入する際は、購入初年度に経費として一括計上できる4年落ちの普通車を検討してみてはいかがでしょうか。