経営者にとって常に頭痛のタネになりがちなのが、資金繰りではないでしょうか? とくに、経営基盤が弱い中小企業や起業して間もない経営者は、資金調達方法をいくつか用意しておくべきです。 しかし、中小企業やベンチャーの場合、大企業と比較すると信用力に乏しいものです。 そのため、融資を受けたくてもなかなか受けられない事情があります。 もし、銀行からの融資が受けにくい場合には、今回紹介する商業手形割引を活用するのも一つの方法です。 ここでは、商業手形割引とはどのようなものかについて詳しく解説します。

商業手形割引の基礎知識

商業手形割引についてよく知らないという人もいらっしゃるでしょう。 そこで、まず商業手形割引とは何ぞや、という点について詳しく解説していきます。

商業手形割引とは?

商業手形割引とは、代金の決済方法として受取手形を取得したとします。 通常であれば、設定されている期日に現金化することになるでしょう。 しかし、商業手形割引の場合、期日が来る前に金融機関がその手形を買い取ってしまいます。 つまり企業としてみれば、通常よりも早く手形の現金化ができ資金を確保できるわけです。 そして該当する手形は、買い取った金融機関が決済します。 企業に支払ったお金は決済によって回収される形です。 一方企業は、手数料という名目で利息を金融機関に対して支払わないといけません。 手数料がいくらになるかは、期日までの日数に応じて決められるのが一般的です。 具体的に見ていきましょう。 とある企業が100万円の商品を1月1日付で納品して販売しました。 取引先は、3月末日に支払う手形を出したとしましょう。 通常3月31日に企業は売り上げを現金として回収する形です。 ところが2月末日までに50万円の支払期日が迫っていて、手元にお金がない場合、このままでは資金がショートしてしまいます。 そこで商業手形割引を活用したと仮定しましょう。 企業が普段お世話になっている金融機関に、自分が持っている100万円の受取手形を買い取ってもらいます。 手数料が5%だったと仮定すると31日前に現金化するので、100万円×5%×31日/365日で4,246円程度は差し引かれます。 しかし99万円以上を現金化できるので、50万円の支払いも余裕を持って対応できるわけです。

手形貸付との違い

商業手形割引の話をすると、手形貸付と混同してしまう事業者もいるようです。 両者とも手形を使った資金調達方法ですが、仕組みが異なります。 手形貸付の場合、自社で保有している手形を担保にしてお金を借りる手法です。 商業手形割引は借り入れではなく、持っている手形を期日前に現金化してしまう方法になります。

商業手形割引の必要性

商業手形割引は、時として資金確保の手段として活用すべきアプローチといえます。 約束手形は、近年減少傾向にあります。 2020年の約束手形の交換高をみると、ピークだった1990年と比較して3%程度にまで減少しています。 これは、現金決済が増加した、電子記録債権の登場など背景はいろいろとあります。 かなり少なくなっていますが、金額でみると134兆円超に達しています。 決して少額ではありません。 中小企業の中には、いまだに手形で決済しているところも少なくないでしょう。 手形の弱点は、決済期日前に現金化できない点です。 しかもビジネスをしていると、想定外に現金が必要になることもありますし、資金繰りが悪化することも考えられます。 「今すぐ手形を現金化しないと…」と、頭を悩ませる事態もあるでしょう。 とくに下請け企業の場合、元受会社から手形で代金を受け取るケースは、いまだ多いといわれています。 その結果、売上代金の現金化できる日時が、仕入れ代金の支払期日より後になることも十分想定できます。手元に資金が残らず、運転資金を確保するために商業手形割引という方法のあることは頭に入れておいて損はありません。

商業手形割引の仕訳はどうなる?

商業手形割引を利用した場合、手形決済よりも前に現金が転がり込んでくる形になります。 この場合の仕訳がどうなるかについて、ここで見ていきます。 100万円の手形があって、1か月前に5%の手数料で商業手形割引した場合を想定しましょう。 まず手形を受け取った時には、借方が「受取手形」、貸方を「売上」として処理します。 そして、それぞれ100万円と記載します。 商業手形割引を利用して現金化した場合ですが、まず借方は「当座預金」と「手形売却損」という項目にします。 5%で1か月前に現金化した場合、手数料は4,246円になります。 そこで「当座預金」には、手数料を差し引いた995,754円、「手形売却損」に4,246円と記載します。 一方貸方は「受取手形」にして100万円という形で処理しましょう。

商業手形割引のメリット

商業手形割引のメリットとして大きいのは、早めに現金を確保できる点です。 しかし、それ以外にもいくつかメリットがありますので、ここで見ていきます。 ポイントで簡潔に紹介するとメリットは以下のようになります。 1.早期に現金を確保できる 2.審査は甘め 3.低金利で現金化できる それぞれどのようなところがメリットかについて、詳しく見ていきましょう。

早期に現金を確保できる

手形の場合、現金化するまでに数カ月かかってしまうのがデメリットです。 それまでに資金繰りが持たないこともあり得ます。 商業手形割引の場合、当初の期日よりも早く現金化できるのは大きなメリットといえます。 商業手形割引を取り扱っている業者に申し込めば、最短即日現金化に対応しているところもあります。 急な出費を強いられて、手持ちがない場合などに重宝するサービスといえます。 売掛金が多いと、いわゆる黒字倒産を起こすリスクが高まります。 損益上は黒字になっていても、売掛債権が多くて現金が手元になく、資金繰りが悪化してしまうからです。 商業手形割引を利用すれば、黒字倒産の憂き目にあうリスクを軽減できます。

審査は甘め

銀行融資などと比較して、商業手形割引は審査が甘めなところもメリットといえます。 銀行融資の審査に引っかかったような企業でも、商業手形割引を利用すれば現金化できるケースも珍しくありません。 というのも、銀行融資のように審査の対象が申し込んだ経営者ではないからです。 手形を振り出した取引先に十分な信用力があれば、現金化できるわけです。 また銀行融資の場合、申し込むだけでも一苦労です。 決算書や資金繰り表などのいろいろな資料を準備しなければならないからです。 しかし、商業手形割引の場合、そこまで多くの必要書類を準備する必要はありません。 手続きを簡略化できますし、その分早期に現金を確保できる可能性が高いでしょう。

低金利で現金化できる

商業手形割引を利用する場合、割引手数料を差し引いた金額を現金化する形になります。 この割引手数料はほかの借入で発生する金利と比較して、低めに設定されています。 業者によってまちまちですが、大体銀行の場合1.5~5.5%といったところが相場といわれています。 手形割引専門の業者もあり、こちらは金融機関と比較すると金利は高めです。 しかしそれでも2.5~12.0%といったところが相場です。 ビジネスローンの場合、金利が10~15%といったところが相場といわれています。 これと比較しても低金利なので、資金調達におけるコスト圧縮効果が期待できるわけです。

商業手形割引のデメリット

商業手形割引にはメリットのある半面、デメリットのある点も留意しておきましょう。 主要なデメリットとして、以下のようなポイントが考えられます。 1.不渡り時には弁済義務が発生する 2.買戻しは不可 3.割引手数料が発生する それぞれどのようなところに注意すべきか以下で解説しますので、参考にしてください。

不渡り時には弁済義務が発生する

商業手形割引を利用して現金化した手形が、もしかすると不渡りになる可能性もゼロではありません。 その場合には、借入人たる利用者が、手形を買い戻さないといけないので注意しましょう。 商業手形割引を利用しているので、企業には手元に現金が十分残っていない可能性が高いでしょう。 それなのに不渡りが出れば、弁済しなければなりません。 買戻しのための資金を別に確保しなければならなくなるので、取引先の資金状況などについて、ある程度調査しておいた方がいいでしょう。

買戻しは不可

先ほど紹介した不渡りの発生した場合を除き、買い戻しができないこともデメリットといえます。 たとえば、手持ち資金が足りないので商業手形割引を利用しました。 ところが後日、入金が発生したなどで資金的に余裕のできる事態も考えられます。 このような場合に買い戻しはできないわけです。 ただし例外的に、手形割引人が同意した場合は買い戻し可能です。 ただ買戻しをする際に手数料を支払わないといけないので、商業手形割引利用時とダブルでコストが発生してしまいます。

割引手数料が発生する

商業手形割引を利用すれば、割引手数料が発生するのもデメリットです。 数千円単位になることが多いのですが、期日まで待てば全額回収できた現金が多少目減りすることは覚悟しておきましょう。 しかし、他から借り入れする場合と比較すると、コストは少なくて済みます。 現金が不足していて、このままでは支払いができなくなるというのであれば、商業手形割引の利用を検討する価値はあります。

商業手形割引業者の選び方

商業手形割引に対応している業者は、いろいろとあります。 初めて利用する際には、どこに依頼すればいいかで迷うでしょう。 商業手形割引業者を選ぶ際には、いくつか比較すべきポイントがあります。 1.銀行か専門業者か 2.貸金業登録しているか 3.業歴が長いか それぞれなぜ重要なのかについてまとめましたので、ご利用前にご一読ください。

銀行か専門業者か

商業手形割引のサービスしているところとして、銀行と専門業者に分類できます。 それぞれ異なる特徴があります。 銀行の場合、手数料が低いのでコストがかかりません。 しかしその反面、現金化に数日かかる可能性があります。 また審査も厳しめです。 一方専門業者は、銀行と比較すると、手数料は高めです。 しかし、手続きがスピーディで、早ければ即日現金化が可能なところもあるほどです。 また銀行よりも審査が甘めな傾向も見られます。 業歴が浅く信用力の乏しい企業でも、現金化できる可能性があるので利用するのも選択肢の一つです。

貸金業登録しているか

商業手形割引専門業者の中で、一部悪徳業者もいますので注意しなければなりません。 そこでポイントになるのが、貸金業登録しているかどうかです。 商業手形割引は、貸金業法の対象になるので、登録手続きをしていないと本来サービスは認められません。 貸金業登録をしているとサイトやチラシなどのどこかに、「○○知事(○)第○○○○○号」という記載があるはずです。 これが記載されていなければ、非合法の業者の可能性があります。 また金融庁のサイトで、貸金業登録しているかどうか、番号を入力すれば確認できます。利用前に、実在する登録番号か確認してください。

業歴が長いか

先ほど紹介した貸金登録番号の中にカッコ表記の部分があったでしょう。 カッコ内の数字は、何度登録しているかを表しています。 つまり数が多ければ多いほど、業歴が長いというわけです。 業歴の長い業者は、それだけ利用者の間で信頼されている業者といえます。 逆に(1)とか(2)といった場合は、業歴は短いでしょう。 業歴が短ければすべて信用できないとはいえませんが、中には悪徳業者で何度も名前を変えて登録している可能性もあるので注意してください。

商業手形割引とは何か?のまとめ

商業手形割引は、手形を持っている事業者であれば、手軽に利用できる現金調達の方法です。 業歴が浅い個人事業主や零細企業で、信用力に乏しい経営者が資金確保する場合に、活用してみるといいでしょう。 専門業者であれば、最短即日現金化できる場合もあります。 今すぐ現金が必要だけれども肝心のお金が手元にないというときには重宝するサービスです。