今月3日に投開票が行われたアメリカ大統領選挙。現職のトランプ大統領が政権を維持するのか、それともバイデン氏が勝利し新たなリーダーが誕生するのか。
日本でも多くの方が選挙戦の行方に注目されたのではないでしょうか。
結果は、近年まれにみる大接戦となったほか、今年の大統領選では新型コロナの影響から郵便投票が急増したなどの事情もあり、結果の判明は持ち越しに。
それから数日後に、ようやくバイデン氏の勝利が確実となったという報道がありました。
その後も、トランプ大統領がバイデン氏側の選挙不正を訴えて、法廷闘争を示唆するなど、アメリカ大統領選は依然としてドタバタ劇が続いていましたが、先日にはアメリカ連邦政府がバイデン氏の政権移行手続きを認めたとする報道があり、いよいよ新たな大統領の誕生に向けた動きが本格化しそうです。
こうして、アメリカ大統領選は事実上終了したということになるわけですが、では、今後この選挙結果は日本の経済や企業にどのような影響を与えることが考えられるのでしょうか。
結果判明直後の日経平均株価は上昇
バイデン氏の勝利が伝えられた9日の東京株式市場では、日経株価平均が一時、先週末から600円以上値上がりしました。
終値も2万4839円84銭となり、これは1991年以来29年ぶりの高値。
この記録的な株価の上昇は、開票結果の判明が遅れたことによって生じた不透明感が解消されたためと考えられ、日本においても今回の大統領選の注目度がいかに高かったかを示しています。
ただし、この高い上昇率は結果判明の遅れとその解消が影響したことによる一時的な跳ね上がりと考えられるため、今後も継続して株価が今回ほどの上昇を続けることは難しいと考えてよいでしょう。
日本経済を左右するであろうバイデン氏の政策
今回の選挙結果が日本経済にどれほどの影響を与えるかは、新大統領の就任が確実となったバイデン氏の政策に左右されると考えられます。
その中でも大きな影響を与えそうなのが「気候変動問題」に対する政策です。
石油産業を支持し、地球温暖化の対策の国際的なルールであるパリ協定からの脱退を表明していたトランプ大統領は、いわば「環境よりも企業が行う従来通りの経済活動」を奨励するような政策を進めてきました。
対するバイデン氏の政策は真逆です。
公約にもパリ協定への復帰をかかげているバイデン氏は、CO2の排出量をゼロにする政策を推し進めることが確実であり、クリーンエネルギーの活用を積極的に奨励するものと考えられます。
バイデン氏が公約通りのクリーンエネルギー政策を推し進めるようであれば、世界の先進国の中でもCO2の削減を目指したエネルギー産業に大きな遅れをとる日本の経済成長は伸び悩む可能性があります。
たとえば自動車産業。
日本経済を支える大きな柱のひとつともいえる自動車産業ですが、世界各国で進められる自動車のEV化に関しては遅れが生じているといわざるをえない状況にあり、このまま品質の高いEV車を量産できなければ、アメリカへの自動車輸出が鈍化することも考えられます。
一方で、バイデン氏は、トランプ大統領が離脱したTPP(環太平洋経済連携協定)への復帰も視野に入れているといわれています。
アメリカのTPP復帰となれば、アメリカによる東南アジアやインドへのインフラ投資が拡大する可能性も高いため、こちらも日本の経済を支える建設機器や素材といったインフラ関連事業の活性化につながると予想されます。
また、「増税」もバイデン氏がかかげる政策のひとつです。
新型コロナウイルスの感染者数が世界で最も多いアメリカですが、この状況下での増税がアメリカ国民の消費活動にどこまで影響を与えるかにも注目です。
日本経済は、特にアメリカの経済に左右されやすいといえます。
ですので、仮に新型コロナがの収束を待たずして増税へと踏切り、アメリカ経済が停滞するようなことにつながれば、日本経済も少なからずダメージを受けることが予想できます。
まとめ
今回のアメリカ大統領選挙は、新型コロナウイルスが蔓延するパンデミックのなかで行われたことや、トランプ大統領が選挙結果に対する猛抗議を行なったことなどもあり、アメリカ全土のみならず日本にもさまざまな混乱や不安が生じました。
そのような混沌とした選挙戦はまもなく終わりを迎え、いよいよ来年の1月20日には新たなアメリカ大統領が誕生することになります。
一方、アメリカの新たな大統領の誕生によって日本の経済はどうなっていくのか。
その行く末は、事実上の新大統領として決定済みといえるバイデン氏が掲げる政策に少なからず左右されるといって間違いありません。
大統領に就任後のバイデン氏が、現状で掲げる政策を変換することなく推し進めるのか。
また、昨今続く新型コロナウイルスの影響を鑑みて、政策を転換することになるのか。
日本が、世界の中でも特に大きな影響を受けるアメリカの社会と経済の移り変わりに今後も注視していかなければなりません。