事業の成長や資金繰りのためにビジネスローンを検討している方は、確定申告をしっかりと行っておく必要があります。売上や経費の記録によって審査の基準を満たしているかを判断していて、その重要な情報源となるのが確定申告を証明する書類です。そのため、確定申告とビジネスローンは切っても切れない関係と言えるでしょう。この記事では、ビジネスローンと確定申告の関係性を解説していきます。

ビジネスローンと確定申告の基礎知識

ビジネスローンを利用する時には確定申告書の提出が求められる場合がほとんどです。確定申告書は事業内容と事業の収益などが分かる書類であり、最低でも2年の確定申告書が必要となる場合が多いのです。
ビジネスローンを利用する前に、確定申告に関する情報をまとめていきましょう。事業者であれば確定申告の知識は知っておいて損がないために、簡単に紹介していきます。

ビジネスローンとは?概要と特徴

ビジネスローンは、事業を営む個人事業主や法人が資金を調達するための金融商品として知られています。主な用途としては、運転資金や設備投資、事業拡大であり、その費用をビジネスローンで調達する人も少なくありません。
金融機関が提供するビジネスローンの特徴を知っておくと、効率よくビジネスローンを利用できるでしょう。一般的には以下の点を知っておけば十分です。

・融資額
・審査基準
・返済期間

融資額

小規模事業から大規模事業まで幅広いニーズに対応可能できるために、融資額は幅広く設定されています。ビジネスローンは個人事業主や中小企業経営者のためにも融資を行っていて、数百万から数千万単位の融資が可能です。

審査基準

審査基準は、借り入れる際にも重要です。事業計画や収益状況、確定申告書などが重視され、個人のローンの審査よりも厳しくなる傾向があります。この審査に確定申告は大きく関わっていて、会社の経済状況などを知る上では欠かせない情報となっています。

返済期間

返済期間も契約の際に設定されます。短期から長期まで多様な選択肢があり、その返済期間と用途はつながっています。これらの特徴を理解することで、自分の事業に合ったビジネスローンを選ぶ事が重要で、多すぎても負担になるし、少なすぎてはビジネスローンを借り入れた意味がなくなってしまいます。
これらの返済期間も確定申告書などの情報から分析して設定される場合がほとんどです。

確定申告とは?その重要性を理解する

確定申告についても紹介していきましょう。確定申告とは個人や法人が一定期間の所得を計算して、税金を申告・納付する事です。個人事業主やフリーランスの働き手には、毎年3月15日までに確定申告を行うのが義務とされていて、様々な書類の整理や情報の整理などが必要となってきます。
確定申告の主な目的というは以下のものが一般的であり、これらの目的を知っておきましょう。

・税金の納付。
・収益状況の明確化
・融資審査への影響

これらの目的のために確定申告を行い、適切な確定申告を行っているとビジネス面では様々なメリットが生まれます。ビジネスローンの審査通過率が向上するなど、ビジネスローンを借り入れる場合にも欠かせません。
そうしたメリットの一方で、申告漏れや不正があると信用を失う原因になるなど、慎重に申告は行わなければいけません。

ビジネスローンにおける確定申告の役割

ここでは、確定申告書とビジネスローンの審査の関係性を簡単に説明していきましょう。ビジネスローンの契約においては確定申告書という書類は、最も重要な書類の一つです。金融機関としては、収入が安定している事を確認する意味があります。
さらに、事業の健全性や信用力の評価なども判断しています。赤字・黒字の状況や経費管理の適正さが分かり、どれくらいの融資が可能か、どれくらいの金利で契約するかなど、様々な判断材料となるのです。

ビジネスローンに必要な確定申告書類とは

ビジネスローンを申し込むと、確定申告書の提出が求められます。確定申告書類とはどんなものか分かっていない事業者も多く、税理士や会計士、事務員などに任せっきりという事業者も多いのが現状です。審査の際には必要な書類を提出すれば、専門的な知識などが必要ないのでご安心ください。

しかし、確定申告を正確に、ていねいに行っていないと大きなマイナスポイントになってしまいます。確定申告は個人事業主などであれば、行っていて当然です。確定申告をすると、その記録が残り、確定申告の状況が分かる書類も手に入ります。ビジネスローンの申し込みでは確定申告書類を提出すれば、事業の健全性が証明されます。
逆にこうした書類を用意できない場合には、信用度の低い会社と判断されたり、経理管理がずさんな会社と判断されたりする可能性が高いのです。

個人事業主が用意すべき書類

個人事業主がビジネスローンを申請する際には、確定申告書類の提出を求められるのが一般的です。提出書類は各社によって違いますが、共通しているのは身分証明書と確定申告書類です。この二つはどんな場合でも必要となります。また近年増えているオンライン契約の場合には、こうした書類を電子書類として提出することになります。

具体的には、確定申告書第一表と第二表が必要です。事業全体の収益や所得が記載されている書類であり、銀行や金融機関が最も重視する書類として覚えておきましょう。これに関連して、収支内訳書も必要となる場合もあります。さらに、納税証明書も要求される場合もあります。これらは事業の収益の状況や経理の情報などが分かる書類であり、ビジネスローンの金利や返済期間などの項目を決定する要因となるのです。
提出前に不備はもちろん、最新年度のものが揃っているかを確認しておくと安心です。こうした書類は複数年分が要求される事もあり、1年分だけでない事は覚えておいた方がいいでしょう。

法人経営者が必要とする書類

法人の場合には個人事業主よりも提出書類が多岐にわたっていて、法人としての契約の方が手間がかかる事は知っておきましょう。
法人の契約に必要な書類は、一般的には以下のモノがあります。

・法人税確定申告書
・貸借対照表(バランスシート)
・損益計算書(PL:Profit and Loss Statement)
・法人の納税証明書

「法人税確定申告書」とは法人の収益や所得がまとめられた書類であり、企業の利益状況を判断するためにも必要不可欠です。個人事業主にとっての確定申告書と役割としては変わりません。
「貸借対照表(バランスシート)」は会社の資産や負債の状況を示す書類となっていて、財務体質や返済能力を判断する材料となります。
「損益計算書(PL:Profit and Loss Statement)」は一定期間の収益や費用、利益が分かる書類となっていて、事業活動の収益性を示す事になるために重視されています。
「法人の納税証明書」とは、法人としての税金を適切に納付していることを証明する書類となっていて会社の信頼性を担保するという意味と信用情報を推し量るという意味があります。未納がある場合は審査に影響を与える可能性があるために、十分に注意して確認しておかなければなりません。

銀行や金融機関が求める情報のポイント

銀行や金融機関が確定申告書類を通じて確認したいのは、どんな点なのでしょうか。銀行や金融機関が求める情報には、「収益の安定性」や「利益率の高さ」、「税金の適正納付」、「事業の透明性」の4つのポイントがあります。
「収益の安定性」は、過去数年分の収益データ安定した事業運営が行われているかを評価するために重要です。
「利益率の高さ」が分かると、売上に対する利益率が十分であるかどうかが分かり、ビジネスローンの返済能力の指標として利用されます。
「税金の適正納付」は、納税状況を把握する事で事業の信頼性を図るという目的があります。信頼性の高い会社である事を証明する意味でも、重要な要素です。
「事業の透明性」は、収支が明確で隠れた負債や未申告の収益がない事を確認するために重要です。

これらのポイントが確定申告書を利用して判断するポイントであり、金融機関の審査をスムーズに進めるという事に繋がります。事前に書類を整理する事によって、契約までをスムーズい進められます。時には専門家に書類を確認してもらう事も検討してもいいでしょう。

確定申告の数字がビジネスローン審査に与える影響

確定申告の数字がビジネスローンの審査にどのような影響与えるのかを知っておきましょう。事業をしていれば、確定申告は必須です。そして、確定申告では黒字や赤字などの財政的な状況が分かります。そうした事がビジネスローン審査にどんな影響を与えるかが契約の上でも最も重要です。経営がうまくいっておらず赤字申告となっている場合には、ビジネスローンを借り入れる上でどういった扱いになるのかも知っておくといいでしょう。

収入と利益の把握:審査基準における位置づけ

ビジネスローンの審査では、確定申告書に記載された収入と利益が最も重要な指標と言えます。金利はもちろん、返済期間などもこうした情報から決定されます。最もわかりやすいのは「売上(収入)」です。売上(収入)は事業内容を把握するためにも重要で、過去3年分の売上推移が重視される傾向があります。
さらに、経費と利益といった内容もビジネスローンの審査に影響を与えるのです。利益率が低い場合には、返済能力に疑問を持たれる可能性もあるために、金融機関側も重視しています。その他にはキャッシュフローの情報も影響を与え、ローン返済が可能な資金計画が立てられるかどうかがキャッシュフローから推し量る事ができます。

節税と借入審査のバランスを考える

近年の経済状態の悪化などから、節税という考えが事業者の間でも広がっています。事業者の多くが節税を意識していますが、過度な節税がビジネスローン審査に悪影響を与える場合があります。
節税目的で利益を圧縮しすぎると、税金が安くなるというメリットは得られますが、「利益が少ない会社」と対外的には判断されてしまう可能性があります。金融機関から「収益性が低い」と判断されると、有利な条件でビジネスローンを借り入れる事ができない場合も出てきます。

経費を正確に計上するという事は、財務の健全性を高めるためにも重要です。しかし、不自然な経費の増加は審査に対してマイナス要因となってしまい、ビジネスローンにも影響を与えます。節税と借入審査のバランスを考えるという視点は、意外にもビジネスローンの契約には大事なのです。

黒字決算・赤字決算でのビジネスローン申請の違い

黒字決算と赤字決算では、ビジネスローン審査にどんな影響が出るのでしょうか。まずは黒字決算の場合です。黒字の場合には、金融機関からの信頼が高まる傾向があります。ただし、黒字幅が小さい場合は、返済期間や金利にも多少の影響がでます。

問題なのは赤字決算の場合です。赤字でも申請は可能であり、赤字を払しょくするために資金調達を考える企業も当然存在します。しかし、面談などでは赤字の原因や改善計画を説明する必要があり、整合性の取れない説明をするとビジネスローンの借入自体が困難になります。
しかし、事業計画書や収益回復の見込みを示す事で、審査を通過する可能性が高まるなど、赤字だからと言ってビジネスローンの借入自体をあきらめる必要はありません。

確定申告を適切に行うための注意点

確定申告を適切に行う事が、ビジネスローンの審査の通過可能性を高める事はここまで解説してきました。確定申告は分かりにくさもある制度と言われてきましたが、近年ではオンラインでの申告なども広がっていて、専門的な知識がなくても申告しやすくなっています。
ここでは確定申告についてビジネスローンの審査に影響が出ないように、簡単にその手順や知っておきたい情報などを解説します。

青色申告と白色申告の違い

確定申告には、青色申告と白色申告が存在します。それぞれで、税制面での優遇や手続きの複雑さが異なりますが、ビジネスローンの申告の際にも多少は影響が出てきます。
まずは、青色申告の場合です。青色申告の場合には、最大65万円の特別控除が受けられるというのが最大の特徴です。また、赤字の繰越控除が可能であったり、財務状況を詳細に記載する必要があったりするなど、企業としての信頼度が高い申告と見なされます。

白色申告は手続きが簡単な代わりに、控除や税制優遇が少ないという特性があります。白色申告の方が金融機関にとっては信用が低いですが、ビジネスローンの条件に大きな影響を与えるわけではないので、そこまで深刻に受け止める必要はありません。

重要なのはしっかりと経理管理が行えているかであり、返済に影響がない範囲内の経営内容であれば、そこまで慎重になる必要はありません。金融機関が確認するのは、「確定申告が毎年行われているか」、「収益はいくらか」、「倒産のリスクはないか」などで、あくまでも判断材料の一つとして確定申告書を確認するという視点は大切です。
もしも確定申告の内容が悪くても、他の書類でカバーすれば問題はありません。

帳簿付けと経費管理の重要性

確定申告を適切に行うためには、ビジネスローンを借り入れる前に、日々の帳簿付けと経費管理という事が重要です。正確な記録が取れていないと、確定申告の際にかなり手間取ってしまう場合があります。売上や経費を漏れなく記録し、収支を明確にしておく事によってスムーズに申告できます。経費の分類も確定申告には重要で、申告をする際には事業経費と私的経費を区別しておくと、申告の際の記載が簡単になります。

定期的な確認をしておくと、確定申告は楽になります。月ごとに帳簿を確認し、ミスや抜け漏れを防ぐという効果もあり、確定申告は年に1回は必ず行うために、日ごろからの準備は必要です。確定申告を正確にスムーズに行っている事が分かれば、金融機関からの評価も向上します。この事がビジネスローンの審査にも影響を与えるために、しっかりとした準備をして確定申告を行う事は資金調達にも大きな意味を持つのです。

税理士に依頼する場合のメリットとデメリット

確定申告は、個人で行う必要はありません。金融の専門家に依頼するというのも、スムーズな申告には効果的です。税理士に確定申告を依頼すると、多くのメリットがあります。
彼らは税制についての知識を持っているために、思わぬ控除が受けられる場合もあります。また、申告の手順を熟知しているために、確定申告をスムーズに行うという事に関しては心配がなくなります。

専門家に相談する際のデメリットも考慮しておきましょう。一つは費用が発生するという事です。事業規模によっては高額になる場合もあり、資金に余裕がある場合に相談する事にした方がいいでしょう。また、専門家に任せ切る事で、自分自身で財務状況を把握しにくくなるという可能性もあります。

税理士・会計士の力を借りるという選択肢は非常に効果的ですが、正確な申告と効率的な融資対応が可能になるという点は特に大きなメリットです。

ビジジネスローンと確定申告のまとめ

確定申告はビジネスローンを利用する際には、絶対に避けられない事柄です。正確で詳細な申告書を準備することが、融資審査をスムーズに進める大きなポイントです。また、確定申告書がしっかり整っている事は信用度の高い事業者であることの証明にもなるために、日ごろから確定申告はもちろん、その書類やデータなども保管しておくと安心です。
この記事でご紹介したポイントを参考にして、確定申告とビジネスローンを効果的に活用してください。