スタートアップの資金調達は、エクイティ・デット・アセット・補助金や助成金・クラウドファンディング・RBFの6種類を、事業フェーズに合わせて使い分けるのが基本です。シード期からシリーズDまで最適な手段は変わるため、株式の希薄化の許容度や返済原資を踏まえて調達手段を組み合わせることが重要です。

この記事では、スタートアップの資金調達方法について解説します。また、フェーズ別の使い分けや失敗パターン、成功可能性を高めるポイントもあわせて紹介します。

この記事を読めば、自社のフェーズに合う調達ミックスを設計できるので、資金調達を検討しているスタートアップの経営者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

スタートアップの資金調達方法

スタートアップの資金調達方法は、大きく「エクイティ」「デット」「アセット」の3系統に、「助成金・補助金」「クラウドファンディング」「RBF」を加えた6種類に分類できます。各方法の具体的な特徴を順に整理します。

エクイティファイナンス

株式を新規発行して投資家から出資を受ける方法です。返済義務がなく赤字でも調達できる一方、株式の希薄化により創業者の持株比率が下がり、経営判断に対する投資家の関与が強まります。
ベンチャーキャピタルやコーポレートベンチャーキャピタル、エンジェル投資家からの出資が中心で、長期視点で成長を目指すスタートアップの主軸となる調達手段です。大型資金を1度に集めやすい点がメリットですが、投資契約の交渉や株主構成の設計に時間と労力がかかり、初回設計の影響が後続ラウンドや経営判断に長く残る点に注意が必要です。

デットファイナンス

銀行・信用金庫・日本政策金融公庫・ノンバンクなどから借り入れを行う方法です。元本と利息の返済義務はありますが、持株比率を維持できる点がメリットです。創業期向けには、日本政策金融公庫の創業向け融資、信用保証協会の保証付き融資、各自治体の制度融資、ビジネスローンなど複数の選択肢があります。
デットファイナンスの種類ごとに調達期間や用途は異なり、ビジネスローンは比較的短期間で着金できる場合があります。一方、信用保証協会経由の保証付き融資は金融機関と保証協会の双方の審査が入るため相応の時間がかかります。
短期の運転資金と成長期の設備投資では適した融資商品が異なるため、資金使途と返済原資から逆算して選ぶのが基本です。

アセットファイナンス

自社が保有する資産を活用して資金化する方法です。売掛金を売却するファクタリング、不動産担保融資などが代表例です。
事業の信用力に加えて、売掛先の信用力や債権・担保の内容によって審査されるため、資産があれば誰でも使えるわけではありません。短期的なキャッシュフロー改善には有効ですが、継続利用で手数料負担が積み上がる点には注意が必要です。

助成金・補助金

国・自治体・各種団体が支給する返済不要の資金です。ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金、デジタル化・AI導入を支援する各種補助金、事業承継・M&A補助金、各自治体の創業助成金などがあり、財務を悪化させずに資金を確保できます。
公募期間や採択要件が厳格で、「採択(事業実施の許可)」と「入金(精算払い)」のあいだに事業実施期間と検査期間が入るため、申請から実際に手元に入るまでに数ヶ月〜半年以上かかるケースが多くなります
原則として後払い(精算払い)が中心のため、対象経費を立て替えるキャッシュフローも計画に織り込む必要があります。公募される制度は年度ごとに改廃されるため、申請前に最新の公募状況を確認しておきましょう。

クラウドファンディング

インターネット上で不特定多数から少額ずつ資金を集める手法です。主に購入型・寄付型・株式投資型・ファンド型・貸付型(融熟型)に分かれ、適用される法規制は型ごとに異なります。
株式投資型・ファンド型は金融商品取引法に基づく登録業者を介して行われ、貸付型は金融商品取引法に加えて貸金業法の対象となります。
プラットフォーム運営者への手数料は型・事業者・決済条件で変動します。目標額未達の場合に資金が入らないAll or Nothing方式もあるため、事前のリサーチが欠かせません。プロダクトの市場検証と認知拡大、調達を同時に進めたいフェーズで活用されます。

RBF

RBF(Revenue Based Financing、レベニュー・ベースド・ファイナンス)は、将来の売上の一定割合を返済原資として資金を受け取る手法です。希薄化を避けながら成長資金を確保できる点が特徴ですが、担保の有無や用途制限、返済期間、手数料率は事業者ごとに条件が大きく異なるため、契約条件の確認は欠かせません。
一定の売上実績が前提となるため創業直後の活用は難しいものの、サブスクリプション型サービスなど継続収益のあるスタートアップで採用が広がっています。エクイティの代替案として検討される手段です。

【フェーズ別】スタートアップの資金調達方法

資金調達は事業フェーズによって使える手段と適切な金額が変わります。「シード期」「アーリー期」は事業フェーズの呼称、「シリーズA・B・C・D」は資金調達ラウンドの呼称であり厳密には別軸の概念ですが、ここでは一般的な対応関係に沿って整理します。

シード期

シード期は事業アイデアの検証段階で、プロダクトが市場に出る前のフェーズを指します。実績がないため金融機関融資のハードルは高く、調達先は創業者の自己資金、エンジェル投資家、日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金、株式投資型クラウドファンディングなどが中心です。

アーリー期

アーリー期はプロダクトを市場投入し、最初の顧客を獲得し始める事業フェーズです。シードVC・アクセラレーター・エンジェル投資家からの追加出資に加え、創業融資制度の活用も視野に入ります。
プロダクトマーケットフィット(PMF、市場に受け入れられている状態の検証)の達成度が、投資家との交渉材料として重要になります。

シリーズA

シリーズAは、PMFを達成した事業を本格的にスケールさせるための資金調達ラウンドです。VCからの大型出資が中心です。事業計画とKPI(売上、月次経常収益、解約率など)の達成実績が問われ、株式の希薄化を伴いながら、事業拡大に必要な人材・マーケティング・開発リソースを確保していくフェーズとなります。

シリーズB

シリーズBは、組織と市場シェアを拡大するフェーズです。複数のVCに加え、CVCや事業会社からの戦略的出資が増えるほか、売上と返済原資が見え始めれば銀行融資との併用も現実的な選択肢になる場合があります。
財務戦略と、地域・プロダクトラインの拡張計画が問われる段階です。

シリーズC

シリーズCは、黒字化を視野に入れ、事業を全国規模・海外展開に広げていく段階です。VC出資に加え、メガバンク・事業会社・PEファンド(未上場企業への投資を通じて企業価値向上を図り、IPOやM&Aによる回収を狙うプライベートエクイティファンド)からの資金参加も検討対象となります。
IPO(株式公開)やM&Aといった出口戦略(EXIT)の準備が本格化し、ガバナンス体制とディスクロージャー対応の整備が並行して進みます。黒字化のタイミングは業種・成長戦略で差があるため、成長率や市場シェアも評価軸として議論されます。

シリーズD

シリーズDは、事業基盤が確立した後の追加調達ラウンドで、シリーズCで予定したマイルストーンの完遂、IPO直前の資本増強、グローバル展開の加速などに活用されます。
後期ラウンドのVCや機関投資家、PEファンドが主な調達先で、企業価値の評価額(バリュエーション、調達条件に直接影響する企業価値の見立て)も大きくなる段階です。すべてのスタートアップが到達するわけではなく、事業規模と成長戦略次第のフェーズとなります。

資金調達に失敗してしまうスタートアップの特徴

資金調達がうまくいかないスタートアップには、共通する3つのパターンがあります。事前に把握しておくことで、自社の調達計画を見直す材料として活用できます。経営者自身が客観的にチェックする視点を持つことが、計画頓挫の予防につながるでしょう。

資金調達の見通しが甘い

必要資金の算出が甘く、初期投資や運転資金が不足するケースです。最低限の借入のみで創業して設備投資や人件費に回す余裕がなくなる、逆に過大な借入で返済負担が重くなり資金繰りが悪化する、というどちらの方向にも振れます。
経営者の役員報酬や事務所維持費、想定外の支出までを織り込んだ調達計画の精緻化と、売上が読みづらい創業期向けの保守的なシナリオの併用が前提となります。

事業の収益化までに想定以上の時間がかかっている

プロダクトやサービスが市場に受け入れられるまでに想定以上の時間がかかり、その間に手元資金が枯渇するパターンです。「売上が立つタイミング」「PMF達成」「単月黒字化」「累積黒字化」は別の節目であり、混同せず分けて計画するのが現実的です。
バーンレート(月次の現金支出ペース)と、現金残高で何ヶ月生き延びられるかを示すランウェイを常時モニタリングし、想定より遅れるシナリオを前提に保守的にキャッシュフローを見ておく姿勢が欠かせません。

1つの資金調達方法に依存している

1つの調達手段に依存していると、その方法でトラブルが起きた瞬間に資金が止まります。融資は審査落ちや希望額に満たない決裁の可能性があり、出資交渉は条件不一致や投資家側都合で中断することもあります。
エクイティとデットを組み合わせる、助成金・補助金で財務を補強するなど、複数の調達ルートを常時候補に置いておくことで、計画頓挫のリスクを下げられます。

スタートアップが資金調達を成功させるためのポイント

資金調達の成功可能性を高めるためには、事業計画の精緻化、投資家視点の理解、専門家の関与、資本戦略、PR戦略の5つの観点を押さえることが重要です。それぞれ別々で考えるのではなく、相互で関連している事象であることを意識することが重要です。

ポイント①説得力のある事業計画書を作成する

事業計画書は、投資家や金融機関の判断材料となる最重要書類です。市場規模・競合分析・独自性・収益モデル・KPI(事業の状態を定量的に把握する重要指標)・資金使途・回収シナリオを数字で示し、根拠データの出典を明記することが求められます。
理想を語るだけではなく、現状の課題と打ち手を併記することで「経営者として自社を客観視できているか」が伝わりやすくなります。投資家との初回ミーティングまでに、想定質問への回答シートも併せて準備しておくと、対話の整理にもつながります。

ポイント②投資家が重視する視点を把握しておく

投資家が重視するのは、市場の成長性・経営チームの実行力・競合に対する優位性・出口戦略(IPO・M&A)の蓋然性です。
とくにシリーズA以降では、ユニットエコノミクス(1顧客あたりの採算性。顧客獲得コストと顧客生涯価値の比率で表現されることが多い指標)、解約率・顧客単価などの財務KPIが厳しく問われます。投資家のWebサイトや過去の投資実績を確認し、自社が投資テーマに合致するかを事前に検証することが、交渉の前提となります。

ポイント③専門家のサポートを受ける

資金調達は法務・税務・財務の知識が複合的に求められる領域です。種類株式の設計、ストックオプションの発行、契約書のレビューなど、弁護士・公認会計士・税理士の関与で防げるトラブルが多くあります。
資本政策は1度設計を誤ると後戻りしにくいため、早い段階で複数の専門家と関係を構築することが、長期的な企業価値の維持に直結します。

ポイント④将来を見据えた資本戦略を構築する

資本政策(株式の発行・配分・希薄化)は、初回の調達時点でシリーズC〜EXITまでを見据えて設計する必要があります。シードラウンドで株式を放出しすぎると、後続ラウンドで希薄化が想定以上に進み、経営権の維持が難しくなる事例があります。
投資契約の条項(拒否権、優先株式条項のうち優先配当権・残余財産分配優先権・取得請求権など)と希薄化が組み合わさることで、後続ラウンドでの経営の自由度に影響するため、契約条項と資本政策はセットで設計することが基本です。

ポイント⑤戦略的なPR・広報活動で自社の認知度を高める

投資家の意思決定には、定量データだけでなく市場認知や評判も影響しやすくなります。プレスリリース・メディア露出・SNS発信・業界カンファレンス登壇など、戦略的にPR活動を組み立てることで、投資家との初回接触のハードルが下がります。
採用力や顧客獲得力への波及効果も期待でき、事業数値の改善を通じて次回ラウンドの議論にも作用しやすくなります。広報活動はラウンドのタイミングに合わせた中期計画として設計するのが現実的です。

スタートアップの資金調達における注意点

資金調達は事業推進に必要な反面、調達手段ごとに固有のリスクがあります。代表的な4つの注意点を事前に理解しておくことで、調達手段の選択や、複数手段の組み合わせ判断に活かしましょう。

注意点①株式放出に伴い経営の自由度が制限される

エクイティファイナンスでは新株を発行するため、創業者の持株比率が下がります。投資家には議決権が付与され、定款変更や役員選任、事業売却などの重要な経営判断に影響が及ぶ場合があります。複数の投資家から条件提示を受ける際は、株主構成や投資契約の条項(拒否権、優先株式条項など)を弁護士と精査し、長期の経営方針との整合性を確認することが欠かせません。

注意点②毎月の返済負担によってキャッシュフローが圧迫される

デットファイナンスは元本と利息の返済を毎月続ける必要があり、売上の変動が大きい創業期にはキャッシュフローを圧迫する要因になります。返済原資が不足すると追加借入や条件変更(リスケジュール)の交渉が必要となり、金融機関の評価や今後の取引条件にも影響することがあります。
借入時点で売上ダウンサイドのシミュレーションを実施し、過度な負担にならない返済計画かを確認することが重要です。

注意点③手数料によって本来の売上が目減りする

ファクタリングやクラウドファンディングなどは、利用するたびに手数料が発生します。クラウドファンディングは10〜20%(購入型の目安)、ファクタリングは2社間で8〜18%、3社間で2〜9%程度が目安とされ、表面的な調達額より手取り額が少なくなります。
継続利用前提の場合は、年間ベースの手数料総額を試算し、実際の手取り額で資金計画を組むことが重要です。

注意点④着金までにタイムラグがある

申し込みから入金までに要する時間は、調達手段ごとに大きく異なります。ビジネスローンは数日〜2週間程度で着金する場合がある一方、信用保証協会経由の保証付き融資は1〜2ヶ月程度、プロパー融資は案件規模・担保評価・審査内容によって2〜3ヶ月以上かかる場合もあります。
補助金は採択自体が公募から数ヶ月、さらに事業実施・検査を経た入金までは半年以上かかるケースも少なくありません。資金が必要なタイミングから逆算してスケジュールを組み、複数の調達ルートを並行して進めることで、タイムラグによる事業停滞のリスクを下げられます。

まとめ

この記事では、スタートアップの資金調達方法について解説しました。スタートアップの資金調達は、エクイティ・デット・アセット・助成金・補助金・クラウドファンディング・RBFの6種類を事業フェーズと財務状況に合わせて組み合わせ、計画の甘さや単一調達への依存を避けながら、長期視点の資本戦略を設計することが重要です。

この記事を参考に、自社の資金使途・希薄化許容度・返済原資を棚卸しし、フェーズに合う調達ミックスを組み立てましょう。

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